B2B Insight
第3回 「直接材購買における電子調達の活用」
購買・調達活動の2つのプロセス

我々は企業の購買・調達活動を大きく2つのプロセスに分類・定義している。(図2)それはソーシングプロセス(サプライヤ・価格決定)とパーチェシングプロセス(購買実行)である。従来はSCM等の取組みによりパーチェシングプロセス改革をIT活用により、在庫最適化や納期短縮を目的に進められてきた。

「一方ソーシングプロセスは今迄IT技術や関連するサービス等の活用、又プロセス改革自体が遅れていたプロセスである。この要因としては、ソーシングプロセスが非常に属人性が高い業務でありプロセスの改革が難しいという点が上げられる。従来の購買・調達業務では交渉力や交渉の進め方、購入する品目に関する工法や新技術の知識が業務遂行に求められる代表的な能力であると考えられていた。またこのような購買業務の属人性から、購買知識や情報の共有化は行いにくく、未だにバイヤーの机の上は多くの書類で一杯である。見積書のやりとりから交渉の経緯、サプライヤの特性まで多くの企業として共有・活用すべき情報が、バイヤーの頭の中にのみ蓄積されており、熟練者と非熟練者の交渉結果で大きな差異がでるといった状況をもたらしている。
これらのソーシングプロセスの属人性からくるプロセス改革の遅れに対し、「更なるコスト低減」と「企業としての購買能力の向上」という2点の企業課題から、多くの企業でソーシングプロセスの改革ニーズが顕在化しつつある。

コスト低減方策における日本企業の2つの課題

 企業の主要課題である「更なるコスト削減」を推進していくための方策案で大切なポイントは品目の層別化と品目毎の方策抽出・実行があげられる。ここで気をつけなければならないのは、ITツールを導入しただけではコスト低減は実現できないということである。極めて当たり前な話であるが、コスト低減は「交渉等で安くする」「安いところから買う」「安い物を買う」それから「買わない」という4つの方法でしか実現されない。
コスト低減の4つのアプローチについてアジルアソシエイツは方策案を図3のように体系化し、広く方策案を検討することをポイントとしてあげている。

図4のマトリクスは品目別の購買戦略策定のために良くでてくるマトリクスである。横軸にサプライヤ数等の競争環境の高低、縦軸に金額等の戦略的重要性の高低をとり、4つのゾーンに層別化している。左上の象限は戦略部品のゾーンでありサプライヤの技術力に依存するような高い技術力が必要になる、もしくは特定の1社しかできないと思われている品目がここにプロットされる。この象限の品目は一般的には開発上流段階でのサプライヤとの協業等開発購買の推進でコスト低減を図っていくゾーンであると言われる。

左下の象限はボトルネック部品と言われ、単純なプレス部品や加工外注などの1社に集約する方がコストメリットがある等のゾーンであり、テクニカルなVA・VEや工程の変更、物流費や在庫管理費用の削減等、自社を含むサプライヤとトータルでの原価低減を促進するのが一般的な方策としてあげられる。
右下の象限は一般・汎用部品であり、多数のサプライヤが対応可能であり標準化された部品がここにプロットされる。このゾーンの原価低減方策は部品の統合・集約化、サプライヤの集約等が一般的である。
右上の象限は競合部品と呼ばれ、多数のサプライヤを競わせることでコスト低減を図っていくゾーンと考えられている。
教科書的な各象限の品目に対するコスト低減方策は今迄述べた通りであるが、実際にプロジェクト等で分析を行ってみると日本企業の場合ある特徴が浮き彫りになる。実際にプロットしたイメージの図5を見ると分るが、多くの企業では品目毎のポジションが左端と右端に偏っているケースが多い。

これは日本の調達・購買活動はソーシング能力に欠点を持っているということを意味する。筆者の過去の経験に基づくと多くの企業でこういう状況が見られる。つまり、左に貼りついている品目は、サプライヤが1社しかいない、と思い込んでいる品目であり、実は新しいサプライヤを探す努力や競争させる環境を整備できていない場合が多い。一方右に貼りついている品目については購買管理が利いてなく、サプライヤを競わせ集約を図っていける余地が多く残されている。

また図6のケースも良くある。ボトルネック部品や競合部品においてはコスト構造やコストの妥当性を評価し、目標を割付けしていくコスト分析・コスト比較の能力が必要になる。最近コストベンチマークというコスト分析・コスト比較手法を一部の企業で採用しはじめているが、これはコスト査定の手法ではなく客観的なコスト比較に基づくコスト分析の手法である。

このように日本企業の場合今迄のコスト低減方策はVE・VA活動などのテクニカルな方策と入手した見積書の価格の妥当性を評価する査定と交渉能力が中心であり、ソーシングとコスト分析・比較という方策面でまだまだコスト低減の機会が残されている。そしてこの2つの能力は「電子調達」ツールを活用することで支援が可能である。

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