2016.9.7号
「調達購買改革を巡る誤解 その2」

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      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2016. 9. 7  ─-

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☆今週のメッセージ「調達購買改革を巡る誤解 その2」
☆2016年下期の「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」の日程のお知らせ
☆「VoPM(Voice of Purchasing Manager)レポートvol.2」発行のお知らせ

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■ 今週のメッセージ「調達購買改革を巡る誤解 その2」
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その2.「サプライヤ評価」=「サプライヤマネジメント」の誤解

前回から調達購買改革を巡る誤解について取上げていますが、今回はその第二回
です。

お客さんなどから良く聞かれる質問で「サプライヤ評価をやろうと検討しているが、
どのような評価項目にすればよいですか?」ということがあります。
しかしそういう企業に限って何のためにサプライヤ評価をやろうとしているか明確で
ないことがとても多いです。

サプライヤ評価はあくまでも手段であり目的ではありません。

つまり何かの目的を達成するために評価をする訳ですが、それが不明確なまま評価
だけ先行するといわゆる評価疲れに陥りやすくなります。
それでは評価は何のためにやるのでしょうか。
大きく分けるとサプライヤ選定や決定のために行う評価と既に取引があるサプライヤ
に対する実績に基づく評価に分けられます。(後者は目的ではありませんが)

前者はこれからサプライヤの選定を行う訳ですから基本的には限られた情報から
多面的に評価を行い、安かろう悪かろうではない最適なサプライヤ選定を行うことが
求められます。ですから評価項目としてもこのような購買取引に関するQCD等の条件
が含まれます。ですから比較的評価の仕組みを構築するのも難しくはありません。

一方で実績に基づく定期的な評価ですが、これは多くの企業で年に一回とか半年に
一回とか実施されるいわゆるパフォーマンス評価と言われるものです。
これは様々な目的が考えられますが、例えば品目別のサプライヤ戦略の策定、高い
評価のサプライヤに対する表彰、低い評価のサプライヤに対する改善や改善支援、
一社発注品などのクリティカルな購買品のサプライヤに対する囲い込みや関係性の
構築などが上げられます。つまり簡単に言ってしまうとサプライヤマネジメントの
ツールとしてサプライヤ評価を行うのです。

具体的な事例を上げてみましょう。

例えばある品目群についてA社、B社、C社の三社との取引があるとしましょう。3社の
評価についてはA社が一番高く、B社、C社は低い。一方でA社が独立系で自社との
関係性は低い、B社は地場系であり自社に対する売上依存度も高く、こちらを向いて
仕事をしてくれる。C社はやはり独立系である。
この場合どのようなサプライヤ戦略やサプライヤマネジメントが考えられるかというと、
例えば評価も関係性も低いC社への発注を減少させA社、B社に振り分ける
(サプライヤの集約)ということが考えられます。一方でA社、B社に対しては取引継続
というサプライヤ戦略になります。
但しB社に対しては取引継続の条件として評価の改善をしてもらわなければなりま
せん。またA社に対しては自社に対する関係性を高めるために、囲い込みを行う、
具体的には定期的な情報共有や表彰、マネジメント同志での定例ミーティングを持つ、
とか、場合によっては出資なども考えられるでしょう。

このようにサプライヤ評価はあくまでもツールであり、それを元にサプライヤ戦略を
策定し、戦略に基づいて各施策に落とし込んでいくことがサプライヤマネジメントの
全体像なのです。

これは品目群毎に考えていく必要があります。よくサプライヤ格付けということで評価
が高いサプライヤから1軍、2軍、3軍、のように区分けをすることがありますが、この
ような総花的な格付け自体にはあまり意味がありません。サプライヤ戦略は品目群
毎に策定するのですから、評価や戦略、戦略に基づきどのような差別化や施策を
行うか、は品目群毎に変わってくるからです。

このようにサプライヤ評価を捉えるとどのような評価をすべきかは目的によって変わ
ってくることが理解できます。例えばある企業のサプライヤ評価軸の事例ですが、
品質(Q)に関する評価がありません。何故ならこの企業は品質が悪い企業とは
そもそも取引をしていないので、現在取引をしているサプライヤの実績評価に品質
評価を入れる必要がないからです。何を目的としてどのような企業を対象にした評価
であるかにより評価項目は変わってくるのです。

昨年の4月まで約3年程「改革推進者勉強会」という会を私が発起人になって進めて
きましたが、その会の1つのグループにサプライヤマネジメントグループがありました。
この勉強会で何社かのサプライヤマネジメントの事例を調べる機会がありました。

各企業ともとても興味深い事例です。ある1社は限定されたサプライヤのみの評価を
行っています。全体で300社以上の取引サプライヤがいるものの評価対象は30社
程度。つまり評価対象となっているサプライヤはバイヤー企業側が関係性を強めたい
サプライヤです。取引金額が大きい、とか1社しか対応できない技術を持っている、
などのサプライヤをあえて評価対象とすることでそれらのサプライヤと緊密な関係を
築こうとしている訳です。この企業のもう一つの興味深い点は購買部門はサプライヤ
の評価を改善することが仕事であり、KPIとして管理しているという点。通常、評価は
やるけど、評価の改善についてはサプライヤ任せ、という企業が多いわけですが、
この企業はサプライヤ評価の改善を購買部門が会社に対して責任を持っているの
です。

別のある企業はとてもシステマチックなサプライヤマネジメントの仕組みを持ってい
ました。サプライヤ評価のための専任チームを持っており、そこが四半期の評価や
評価項目のメンテナンスなどをしています。またサプライヤと自社のマネジメントの
クォタリミーティングを実施したり、トップダウンでサプライヤマネジメントをシステマ
チックに推進しているのです。この企業はサプライヤマネジメント=購買業務と捉え
ているのです。多くの企業では競合見積をとったり、コスト削減交渉をしたり、それが
調達購買業務と捉えていますが、この企業は選ばれたサプライヤと取引をしている
のだから競合見積をとる必要すらないという考え方なんでしょう。つまりサプライヤ
評価やサプライヤマネジメントが調達購買業務そのものであると捉えているのです。

これらの企業に共通しているのは、サプライヤ評価はあくまでもツールや手段であり、
目的ではないということです。

前回集中購買やサプライヤ集約によるボリュームメリットについて、
「購入するモノの種類や作り方によって、また個別企業の工場や設備の稼働
状況によってもボリュームメリットが出て生産コストが下がるモノとそうでないモノが
ある」ということを書きましたがサプライヤマネジメントも同じです。

購入する品目群やサプライヤマネジメントの目的によって評価軸は変わってきます。
私が以前在籍したGEという会社ではCTQ(Critical To Quality)という言葉がよく使われ
ていました。これはシックスシグマの用語ですが「経営成果に重大な影響を与える
要因」という意味です。私は目的のない総花的なサプライヤ評価ではなく、その品目
群でサプライヤや購入品に何を求めるのか、それがCTQであり、CTQを見極めて
それをサプライヤ評価項目にすべきと考えます。

多くの複雑で一般的な評価項目を設定するよりも少数でも重要なCTQとなり得る
評価項目を設定すれば良いのです。(これは教科書には全く載っていないことです)
全てのサプライヤを同じ軸で評価しようとするからおかしなことになるのです。

次回は、誤解その3.「複社発注」=「リスクマネジメント」の誤解について述べていく予定
です。


当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」日程のお知らせ
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2016年下期(9月-2017/3月)の「調達・購買トレーニング・セミナー」の開催日程を
お知らせいたします。
http://www.agile-associates.com/2016/08/20162016920173.html
お早目のお申し込みをお待ちしております。

【基礎セミナー】
  『調達・購買業務基礎』
      2016年  9月15日(木)
      2016年 11月18日(金)
      2017年  3月17日(金)    
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     2016年 11月10日(木)
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  『調達・購買部門改革推進者』
     2016年12月15日(木)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html

  『調達・購買部門のファンダメンタルスキル』
  ご要望により新しいプログラムを作りました。
     2017年 2月10日(金)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html
 
  『コスト削減手法と戦略ソーシング』
     2017年 2月16日(木)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html

  『経費削減・間接材購買業務改革』
     2016年 9月 8日(木)
     2017年 3月 9日(木)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html

詳細はトレーニング・セミナーページまで

会場は全て東京23区内(新宿または東京駅近辺)を予定しています。

ぜひともご参加ご検討ください。

どのようなセミナーが自社や自社のバイヤーに向いているか、不明な方はお問合せください。
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info-ag@agile-associates.com

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■ 「VoPM(Voice of Purchasing Manager)レポート vol.2」発行のお知らせ
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「VoPMレポート vol.1」に引き続き「VoPmレポート vol.2」-2016年上期版-を発行
いたしました。

ダウンロード(無償)はこちら
http://www.agile-associates.com/2016/08/vol23_vopm_vol2_2016.html

当レポートは各業界・企業の調達購買マネジャー(PM)による市況動向や予測、景気
動向などについて討議し、それを発信していくものです。それにより各企業の企業経営者
や調達購買担当者に対して現場感のある情報提供を行い役立ててもらうことを目的として
います。

背景としましては現状の経済環境や市況動向の混沌とした状況です。昨今の経済環境や
購買・調達にかかる市況動向などは現状とても混沌とした状況になっています。
特に景況感につきましては各国、各企業によっても景況判断はまだら模様であり、状況が
異なっています。

こういう環境下、調達購買人材には情報収集力・分析力やその情報をタイムリーに伝える
ことが一層求められている状況です。また、単に調達購買人材だけでなく、経営レベルでの
生産拠点の国内回帰など重要な意思決定も求められており、そのための情報収集・分析力
は一層求められています。この意思決定を間違えてしまうと企業の中長期的な競争力に
大きな差がつくような状況となってるのです。

今回も各業種・企業から6人のPM(パーチェシングマネジャー)に集まってもらい市況及び
景況判断について討議をしてもらい、それを集約しレポート作成しました。

ダウンロード(無償)はこちら
http://www.agile-associates.com/2016/08/vol23_vopm_vol2_2016.html


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