2016.9.23号
「調達購買改革を巡る誤解 その3」

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      〜調達購買改革最前線〜
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☆今週のメッセージ「調達購買改革を巡る誤解 その3」
☆2016年下期の「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」の日程のお知らせ
☆「VoPM(Voice of Purchasing Manager)レポートvol.2」発行のお知らせ

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■ 今週のメッセージ「調達購買改革を巡る誤解 その3」
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その3.「複数社発注」=「リスクマネジメント」の誤解

前々回から調達購買改革を巡る誤解について取上げていますが、今回はその三回目
です。

東日本大震災をきっかけに供給リスクマネジメントの手法として複数社発注とかマルチ
ソース化を進めるべき、ということが日本企業においても言われるようになってきました。
今回はこの「複数社発注」が「(供給)リスクマネジメント」につながるかどうか考えていき
ましょう。

その前に先ずは複数社発注の定義についてです。複数社発注は違う言葉では二社発注
とか二社購買、マルチソース、デュアルソースなどと言われています。それぞれの言葉の
意味は大きくは違わないでしょう。しかし、この複数社発注は、元々供給リスクマネジメント
を目的とした購買手法ではありません。複数の企業を競争させてコスト削減を実現したい、
というのがそもそもの目的です。

例えば電機メーカーなどでは汎用品である半導体などを複数の会社から購買しています
が、四半期毎に価格交渉を行い、安いサプライヤから買う量を増やすなどの発注シェア
コントロール(アロケーションという言葉を使います)を行っていますが、これは複数社発注
の代表的な事例と言えるでしょう。

しかし複数の企業を競争させてコスト削減を図るという目的であっても、先の半導体の
事例のように全く同じもの(もしくは代替相当品)を複数の会社から買っているケースは
あまり多くありません。むしろこのようなケースはごく一部分でしょう。
複数社発注とは同じ品目群について2社以上の発注先をサプライヤ候補として持ち、
常にこの複数社を競争させてコスト削減を図る取組み、これがむしろ一般的ではない
でしょうか。

トヨタ自動車は創業者である豊田喜一郎氏が作られた購買係心得にも書かれている
ように複数社発注(2社が基本)が基本方針です。一方でトヨタ自動車は系列関係など
サプライヤとのパートナーシップを重視しています。この二つの基本方針を同時に実現
するために、彼らは品目群ごとに複数社のサプライヤを競争させているのです。それに
より「協調」と「競争」のバランスをとっています。つまり全く同じものを複数社から買って
いる訳ではなく同じ品目群(例えばピストンリングとかベアリングとかシートなど)で、
二社以上の発注先をサプライヤ候補として持っておき、この複数社を競争させていく、
という手法を取っているのです。

これが多くの企業における複数社発注の実体と言えます。

何故そのような手法をとっているのでしょうか。その理由は明快です。同じ品目を複数社
から購買することは二重投資になるからです。特に自動車の場合購買品の殆どは
各自動車メーカーのカスタマイズ品。カスタマイズ品ということは新規発注のためには
金型や専用治具、専用工具などの設備投資が必要です。もし全く同じ品目を二社以上
から買うということになると、これが二重三重の投資につながります。

冒頭での半導体事例のように専用投資が不要な汎用品や原材料など一部の品目では
二社以上から購入しても二重投資にはなりません。このケースでは複数社発注を行う
ことで競争によるコスト削減と供給リスクマネジメントにもつなげることができます。
しかし全く同じ品目を複数社発注するということは一般的にはコスト的な負担につながる
ので、重要且つサプライヤがここしかできない、というような供給リスクマネジメントを優先
せざるを得ないようなボトルネック品目でしか行われないでしょう。そういう品目は一部で
あり稀な品目と言えます。

こういう状況を考えると「複数社発注」は必ずしも「供給リスクマネジメント」にはつながら
ないのです。

しかしカスタマイズ品であっても品目や条件が変われば全く同じ品目を複数の会社や工場
から買うことがあり得ます。以前私が自動車会社で購買担当をしていた時ですが自社生産
していた車種は生産量が非常に多く、1ラインだけでは生産が間に合いませんでした。この
ようなケースでは異なった工場の2ラインで最終製品を生産しているので、全く同じ部品を
異なったサプライヤ2社から購買するという複数社発注の手法を取ることができるのです。

また、最近では生産戦略上国内と海外の2工場(もしくはそれ以上)で同じ製品の生産をして
いるケースも少なくありません。このようなケースでは二重投資になったとしても輸送コスト
や現地の生産コストを考えると国内と海外の複数工場や複数社から同じものを購買すると
いうケースもあり得ます。
これらのケースでは全く同じ品目を複数社発注することで供給リスクマネジメントにもつな
がるのです。

繰り返しになりますが、これらのケースはレアケースであり、多くの品目については供給
リスクマネジメントのために二重投資によるコストアップを容認するということは考え難く、
複数社発注はリスクマネジメントに直結しません。それでは供給リスクマネジメントを目的
とした購買手法の昨今の動向はどのような状況にあるのでしょうか。一つ言えることは
複数社発注についてもそうですが、コスト増や高負荷を無視したリスクマネジメントは
無理があるということです。
昨今の動向としてはティア情報などの源流情報の収集、蓄積などはしっかりやっておく
という前提のもと、リスクに対して事前に手を打っておこうというリスク回避、軽減策よりも
事案が起きた時の初動の速さと、収集した情報を元に適切な意思決定を行うことをより
重視していく方向にあるのではないかと考えます。
また現場の復興をまず第一優先とし、もし現場の復興にあまりにも時間がかかれば、
まずは設備や金型の移転等によって同じサプライヤの違う工場での生産に移行する、
それもできなければ海外含む代替サプライヤの検討、というのが基本的な考え方に
なっています。
基本的な考え方は無理なリスクマネジメントは長続きしない、という前提で如何に復興を
最優先するか、ということです。これは以前メルマガでもふれましたトヨタ自動車の復旧
支援活動でも同じような方針が打ち出されています。
http://www.agile-associates.com/2016/06/2016617.html

今回述べてきたことと前2回の誤解について、共通している考え方はそれぞれ購入している
品目によってサプライヤマネジメントやサプライヤ集約、複数社発注などの購買手法の
適合性が異なることです。ようするに購入品目を層別化して捉え、その購入品目にあった
購買手法を採用しなければ意味がないのです。
複数社発注と言ってもサプライヤ切替えや新規投資によってコストがどれ位がかかるか、
また購入品目群の重要性等の要素によっても取るべき購買手法、施策は異なります。
それにも関わらず調達購買改革のいくつかのキーワードの元、何から何まで一つの考え方
で推進しようとするから無理が生じているのです。

次回は、誤解その4.「部品集約」=「コスト削減」の誤解について述べていく予定です。


当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」日程のお知らせ
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2016年下期(9月-2017/3月)の「調達・購買トレーニング・セミナー」の開催日程を
お知らせいたします。
http://www.agile-associates.com/2016/08/20162016920173.html
お早目のお申し込みをお待ちしております。

【基礎セミナー】
  『調達・購買業務基礎』
      2016年  9月15日(木)
      2016年 11月18日(金)
      2017年  3月17日(金)    
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「アジルアソシエイツの名物セミナーです。
   購買担当者としての心構えから技法・手法の基礎を学べます!」
     
  『経費削減・間接材購買基礎』
     2017年 1月20日(金)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「他にはない間接材購買に特化したセミナーです。」

詳細はトレーニング・セミナーページまで
  http://www.agile-associates.com/train/train.html

【現場学セミナー】
  『調達・購買人材向け交渉力』
     2016年 8月25日(木)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html

  『中堅バイヤー育成』
     2016年 11月10日(木)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html

  『調達・購買部門改革推進者』
     2016年12月15日(木)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html

  『調達・購買部門のファンダメンタルスキル』
  ご要望により新しいプログラムを作りました。
     2017年 2月10日(金)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html
 
  『コスト削減手法と戦略ソーシング』
     2017年 2月16日(木)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html

  『経費削減・間接材購買業務改革』
     2016年 9月 8日(木)
     2017年 3月 9日(木)
  お申込・詳細はこちら
  http://www.agile-associates.com/train/train.html

詳細はトレーニング・セミナーページまで

会場は全て東京23区内(新宿または東京駅近辺)を予定しています。

ぜひともご参加ご検討ください。

どのようなセミナーが自社や自社のバイヤーに向いているか、不明な方はお問合せください。
お問合せ先はこちら
info-ag@agile-associates.com

企業の個別研修もお引き受けします。
ご依頼、ご質問等々は、次のメールアドレスまで!
info-ag@agile-associates.com

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■ 「VoPM(Voice of Purchasing Manager)レポート vol.2」発行のお知らせ
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「VoPMレポート vol.1」に引き続き「VoPmレポート vol.2」-2016年上期版-を発行
いたしました。

ダウンロード(無償)はこちら
http://www.agile-associates.com/2016/08/vol23_vopm_vol2_2016.html

当レポートは各業界・企業の調達購買マネジャー(PM)による市況動向や予測、景気
動向などについて討議し、それを発信していくものです。それにより各企業の企業経営者
や調達購買担当者に対して現場感のある情報提供を行い役立ててもらうことを目的として
います。

背景としましては現状の経済環境や市況動向の混沌とした状況です。昨今の経済環境や
購買・調達にかかる市況動向などは現状とても混沌とした状況になっています。
特に景況感につきましては各国、各企業によっても景況判断はまだら模様であり、状況が
異なっています。

こういう環境下、調達購買人材には情報収集力・分析力やその情報をタイムリーに伝える
ことが一層求められている状況です。また、単に調達購買人材だけでなく、経営レベルでの
生産拠点の国内回帰など重要な意思決定も求められており、そのための情報収集・分析力
は一層求められています。この意思決定を間違えてしまうと企業の中長期的な競争力に
大きな差がつくような状況となってるのです。

今回も各業種・企業から6人のPM(パーチェシングマネジャー)に集まってもらい市況及び
景況判断について討議をしてもらい、それを集約しレポート作成しました。

ダウンロード(無償)はこちら
http://www.agile-associates.com/2016/08/vol23_vopm_vol2_2016.html


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