2014.1.20号
「購買手法」

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このメールは、アジル アソシエイツのお客様、
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その他の機会に名刺交換をさせて頂いた方々にお送りしています。

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2014.1.20  ─

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☆今週のメッセージ「購買手法」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
☆コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー再掲

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■ 今週のメッセージ「購買手法」
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研修やコンサルティング等でお客様と話をしている場面でよく聞かれることがあります。
「私の知らない購買手法を教えてもらえませんか?」

この質問には戸惑ってしまいます。
レストランのメニューなモノの販売ではないので、全てを網羅した購買手法一覧の
ようなものは(一応作ってはいますが)提示することは難しいからです。
また、その人が知っているか知らないか、また知っているレベルの話を聞かなければ
分からないからです。もっと言えば皆さんが知らないような(新しい?)購買手法などは
殆どないからです。

集中購買推進もしかり、開発購買もそう、一時期多くの企業で取組みをしたリバース
オークション、コスト分析手法、最近で言いますとBCPやサプライヤマネジメント、
グローバル調達等様々な取組みがありますが、多くの企業で全く取り組んでいない
手法など殆どない、というのが実態だからです。つまり多くのバイヤーは8割方の
購買手法は知っているのです。

一方で知っているとやっているは大違いですし、ある購買手法をやり始めてみると
それなりに共通した課題がでてくることも間違いありません。多くの企業ではこれらの
共通した(もしくは固有の)課題を乗り越えながら調達・購買部門の進化につなげている
のです。

「知っている」から「やっている」に、「やっている」から「定着させる」に。
重要なのはここなのです。

調達・購買業務はモノを買うということですから、所詮「何」を「どこ」から「いくら」で
「どのように」買うか(買い続けるか)なのです。ですから、やらなければならないこと、
採用できる購買手法など、そう多くないのは当り前なことなのです。例えば
コスト削減手法で言いますと「(交渉等で)安くする」「安いところから買う」
「安いモノを買う」「無駄な買い物をしない」の4手法位しかない訳です。
これらの4手法がどのように当てはめられるか検討することを全てのバイヤーが
いつも「やっている」のが「定着」している状況なのです。
ソーシング業務も同じです。未だに多くの企業で提案依頼や見積依頼は口頭だったり
メールだけできます。そうではなくきちんと前提要件を明確化しマスト要件とベター要件
を切り分け、仕様要件を明文化するだけでなく見積の前提となる商業要件などを網羅し
明文化した依頼書で依頼を「やっている」企業は意外と多くありません。

逆にこのような依頼を行うだけでその企業の調達・購買力が推し量れますし、そのような
依頼を受けた営業は、「これはいい加減な見積りや提案はできないな」となります。
これを常時誰もがやっている状況が「定着」している状況なのです。

以前にも書きましたが調達・購買力が高い企業とはどんな企業ですか、と聞かれると
私は「徹底力がある会社」と答えます。
実際、調達革新大会などで先進企業の調達・購買改革の取組みを伺って共通している
ことは「何か新しいことをやっている訳ではなく決められたやり方を徹底しているだけ」
と多くのマネジメントの方がおっしゃります。
以前トヨタ自動車の調達担当常務がこうおっしゃっていました。
「『愚直に徹底的にやりぬく』これが我々の強みです。」と
そう、求められるのは「購買手法」の発見ではなく、当たり前のことをやり抜く力なのです。


当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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皆様の一層のお申込をお待ちしております。

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ご依頼、ご質問等々は、次のメールアドレスまで!
info-ag@agile-associates.com

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■ コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー
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日経BP社のTech-onサイトに掲載されているコラムですが
改めて皆さんにここでご紹介させていただきます。
2009年に私が執筆しました開発部門と購買部門を巡る話ですが、
今再読しても古さを感じさせません。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162766/

どうぞ楽しんでください。
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第7シリーズ「エンジニアとバイヤーの境界を超えて」

第17回:人事制度 自己申告書

 この物語の主人公である鈴木孝は,総合電気メーカー「霜月電機」の入社3年目
のエンジニアである。霜月電機の人事制度の一つに,自己申告制度がある。
自己申告制度とは,年に一回社員全員が現在の仕事についてどのくらい満足
しているか,今後どんな仕事をしたいと考えているか,といったことを所定の用紙に
書いて提出するものだ。

 この自己申告書を元に,直属の上長が面談を行い,自己申告書は最終的に
人事部に提出される。その内容や配属希望がどの程度実際の異動に反映されて
いるかは不明だが,エンジニアである鈴木にとっては,ある程度キャリアパスが
見えていた。設計部門内で一通りの仕事がこなせるようになって,新商品の責任者
として市場調査から開発,生産,量産化までを商品企画担当者と一緒にやっていく,
というのが一般的な技術屋の出世コースだとされていた。

 そのため,若手エンジニアである鈴木にとっては,自己申告書はあくまでも形式的
なものであり,異動希望の質問に関しては毎年「1.異動希望なし」に○を付けていた。
これは他の若手エンジニアも同様であり,よほどのことがない限り「2.異動希望あり」
「3.将来的に異動希望あり」に○を付けることはなかった。

 鈴木も去年までは躊躇なく「1.異動希望なし」に○を付けていたのだが,今年は
何となく心に引っ掛かるものがある。それは先日,開発購買グループの前田から
聞いた言葉だった。「素晴らしい製品を世の中に広めたいだけだ」。

 自分は今までそんなことを考えたこともなかった。ただ単に,与えられた仕事を
どうにかこなしてきているだけ。本当にこのまま設計部にずっといていいのだろうか?
 ふとそんな疑問が鈴木の心の中に浮かんできたのだった。

 「そうだ,前田さんに聞いてみよう」。鈴木は前田に「ちょっとご相談したいことが
あるので今日の昼休みにお時間をください」という内容で電子メールを出した。

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 その日の昼休みの前田からのアドバイスはこうだった。異動希望を出すにしても,
開発購買グループだけはやめた方がよい。開発購買グループは鈴木のような
若手社員が来る部署ではない。鈴木がいくらやる気を持って,開発と購買のつなぎ
をやろうとしても,社内の人間からはなかなか受け入れらないだろう。
開発を離れてみたいのであれば,生産技術とか実験部門とか基礎研究部門を
考えたらどうか?

 前田のアドバイスは明確だった。だが,鈴木としてはどうも割り切れない部分が
心に残った。

何で分からないんだ?

「鈴木,購買部の田中さんって知りあいだろ」。同期の川端が鈴木に声をかけた。
「うん。知っているよ。田中さんは樹脂部品の発注担当をしているからね。それが
何か?」

「いや,さっき購買のフロアに用事があって行ってたんだけど,田中さんが
購買部長とすさまじい大喧嘩。『何で分からないんだ』って田中さんが部長の前で
怒鳴ってた。感情的になっちゃって大変だった。大丈夫なの,あの人」。

「えっ,本当かよ」。鈴木は以前,田中が開発部長に,サプライヤの設計費用に
関して「金払ってやれよ」と詰め寄った時のことを思い出した。「それいつの話?」
鈴木が川端に尋ねる。

「さっきだよ。多分まだ続いていると思う。田中さんも部長も頭に血が上っていた
から」。

「誰も仲介に入ってないの?」

「課長連中はほとんど席を外しているみたいだったし,止められそうな人は誰も
いなかったみたいだったね」。

「…ちょっと行ってくる」。
「どこへ?」
「購買」

 鈴木はそう言い残して足早に購買フロアに向かった。

 購買フロアの騒ぎは既に収まりかけていたが,ある部屋から田中の大きな声
が聞こえる。部屋の入り口で数人の購買部員が中の様子をうかがっていた。
どうやら田中と購買部長の2人で部屋に入り話をしているらしい。

 「何で分からないんだ?」「購買の役割ってそういうものじゃないだろ?」
「そんなことだから長期的なリレーションが作れないんだ」。大きな田中の声が
部屋の外まで洩れ聞こえてきた。

 鈴木は思った。「相当頭にきているみたいだな。何があったのだろう。」

「誰に向かって口を利いているか,君こそ分かっているのか」購買部長の
怒鳴り声が聞こえた。

「もういい」。田中の怒鳴る声。
 その時いきなりドアが開き,顔を紅潮させて額に大粒の汗をかいた田中が
勢いよく外に出てきた。部屋の入り口に集まっていた数人の購買部員は,
田中の勢いに圧されて通り道を空けるように後ずさり,田中は,あたかも
そこには誰もいないかのように大股で自分の席まで歩き,ノートを机の上に
叩きつけるとすぐに部屋の外に出て行った。

 「田中も相変わらずだな」。購買部長がそうつぶやきながら,既に落ち着いた
様子で自分の部屋に戻った。

ちょっと言いすぎたみたいだな。

 2週間後のことだった。人事発令に購買部の田中の名前があった。
「2009年10月7日 人事発令 購買部 田中孝 霜月製作所出向」

「えっ,本当かよ」。思わず鈴木は声を上げてしまった。
 田中はまだ40代だったはずである。霜月電機でも若いうちからの出向は
珍しい話ではないのだが,若手の出向先は大体の場合,海外子会社か
戦略子会社だ。ところが霜月製作所は100%子会社の組立外注工場で,
社員も100名程度の小さな会社。異動の時期でもないのに出向するのは,
相当珍しいケースといえる。

(次回へ続く)

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162768/

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