2013.12.10号
「日本の常識、世界の常識」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2013.12.10  ─

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☆今週のメッセージ「日本の常識、世界の常識」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
☆コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー再掲

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■ 今週のメッセージ「日本の常識、世界の常識」
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先日購買ネットワーク会の分科会に参加した時に興味深い話がありました。
所謂「支払条件」のことです。

「支払条件」とは「金融条件」とも言いますが、通常モノやサービスが納品、もしくは検収
されてから何日以内(支払サイト)にどのような形態で支払を行うか、という条件です。

通常多くの日本企業の購買担当者は意識すらしていないでしょう。
何故なら財務・経理部門が「こういう基準でやってください」というのをそのままサプライヤ
に適用させているからです。
「支払条件」の支払の形態については伝統的には支払手形を使った支払が一般的でした。
しかし、手形取引については「発行費用の削減」や「印紙税の削減」「事務負担の軽減」を
目的に大企業を中心に減少傾向にあります。
2007年版の「中小企業白書」を読むと中小企業でも支払手形を減少させる予定である
企業が調査対象企業の1/3を超えているようで、この傾向は日本企業全体に言える
ようです。

手形取引はどこに向かうのでしょうか。まずは現金取引でしょう。大手企業との取引が
多い弊社でも取引の99%は現金取引です。(特にお願いはしていませんが)
またファクタリングというサービスもあります。これは債権を金融機関が買取り、債権者に
代わり回収を行うサービスだそうです。(そうは言ってもバイヤー企業側から依頼されて
契約することが多いですが。)サプライヤ側は現金化するためには一定の利息相当分を
負担することで現金化することが可能なサービスです。
一方で電子債権というサービスも最近立ち上がったサービスです。これは従来の手形取引
を電子化したもので電子債権記録機関が電子的な記録を行う取引だそうです。
私も専門家ではありませんが、ネットワーク会では最近の傾向としてファクタリング、電子債権
取引が増えてきているという話がでてきました。

しかし、これらの支払条件ですが、いずれにしても従来の手形取引に代わるものとしての
話であり、多くの企業で支払いサイトなどの変更は自由にはできないというのが、
一般的な日本企業の「常識」だと考えます。
手元に2007年度の中小企業白書の写しがありますがここには面白いアンケート結果が
出ています。「複数の企業に対して同じ製品等を販売する際に、回収サイトの違いによって
異なる価格で販売した経験」がある中小企業が29.2%存在しているのです。中小企業にとって
支払いサイトが重要な要素であることが分かります。
また実際にサイトの違いによって異なる価格で販売したことがある企業数を大きく上回る
66.6%の企業が「製品等を販売する際に回収サイトの変更に伴って価格を変更することが
妥当」と考えている、そうです。
つまり良い支払条件、サイトに対しては価格条件を変更(つまり安くする)ことはあり得る、
ということなのです。それにも関わらず多くの日本企業の「常識」は支払条件は所与の条件
なのです。

一方海外ではどうなのでしょうか。購買ネットワーク会でもこの辺りが話題になりました。
中国では全額、もしくは半額、もしくは材料費分は前払いというのが一般的な条件のようです。
これは現地企業間でも同様だそうです。一方日本のBtoBの取引で前払いという条件は、
買い手企業側にとっては、受容できない条件です。最近では中国企業との取引においては
ジャパンプレミアムと言って、日本企業が購買企業の場合にはある程度日本型の後払い
でも信用ができてきているのでOKとなっているようですが、これも一般的な条件ではない
ようです。買い手である日本企業側は前払は基本的にNGです。ですから商社を噛ませたり、
色々苦労しながら取引をやられているのが実態のようです。
米国では”2/10 net30”のように30日サイトの売掛金を10日以内に支払えば支払価格を2%
割り引くというような企業間信用が一般的に存在するそうです。
つまり支払い条件の柔軟な設定をコスト削減などの材料にすることができるのが世界の
「常識」なのです。

CCCという言葉を聞かれたことがある方はいらっしゃいますでしょうか。これはキャッシュ・
コンバージョン・サイクルの略であり、メーカーであれば材料・部品を掛けで仕入れてから
製品を製造し、掛けで販売し、その販売代金を現金回収するまでに要した日数、つまり1回
のオペレーションが完了するまでに要した日数をいいます。
当然のことながらこの日数が多い企業はその期間分のお金を持っていなければなりません。
つまり自分が持っているキャッシュか、金融機関から借り入れたお金で賄うことになります。
欧米の経営者やCFOはCCCをかなり重要な経営指標として捉えています。
実はこのメルマガでも何度も登場している米国アップル社ですが、CCCは2011年の数値で
-(マイナス)61日になっているそうです。(「事業部門トップになる前に読む会計ブログ」
http://blog.livedoor.jp/kaikeiseminar/archives/9047665.htmlより)

これはどういう意味を持っているのでしょうか。CCCがマイナスということは現金回収が先行
し、支払が後になる逆のパターンなのです。つまり米国アップル社は製品の販売の61日前に
製造に必要な現金を手に入れている(厳密には違いますが・・)ということなのです。
驚くべきパフォーマンスです。このようなマイナスのCCCを実現するためには支払サイトは
長いことが条件になります。
世界の「常識」はこのように「キャッシュ重視」であり「支払サイト重視」経営なのでしょう。
日本のシチュエーションとの違いに気が付かされます。

一方で日本企業においても「キャッシュ重視」「支払サイト重視」にならざるを得ない企業が
あります。中小企業の経営者はそうでしょう。同様に「キャッシュ重視」「支払サイト重視」に
ならざるを得ない企業は、そう再建途上企業です。
私は以前再建途上企業さんの調達部門の支援をする機会がありましたが、ここの調達部門
のプライオリティNo1は「前払い」条件の緩和でした。当然と言えば当然ですが、購買企業
としての立場が弱いため、サプライヤにしてみると売ってあげている、状況なの
です。こういう企業では再建途上の段階でサプライヤの営業部門としてみれば支払い条件
を緩和したいが、社内のルールでどうにもならない、という状況も多く見られました。
こういう状況に陥ると否が応でも「世界の常識」に合わさざるを得ないというのは日本企業
の信用力のメリットなのでしょうが、逆を返すとそこまで追いつめられないと意識すらしない、
という状況が興味深く感じられる今日この頃でした。


当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー
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日経BP社のTech-onサイトに掲載されているコラムですが
改めて皆さんにここでご紹介させていただきます。
2009年に私が執筆しました開発部門と購買部門を巡る話ですが、
今再読しても古さを感じさせません。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162766/

どうぞ楽しんでください。
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第6シリーズ「開発購買という活動の不思議」

第14回

「黒須成形技術展示会」

 この物語の主人公である鈴木孝は総合電気メーカー「霜月電機」の入社3年目
のエンジニアである。鈴木が担当しているデジタルカメラやデジタルビデオは
新製品開発のスパンが極めて短い。デジタルカメラの新機種開発,量産立ち上げ
をしたばかりだと思っていたのに,2年先の新製品開発のキックオフが数日後に
迫っていた。

 まだ詳細は分かっていないが,ハイエンド機種で他社同等の機能を持ちながら,
6万円を切る売価を目指すという噂もささやかれている。鈴木の事業部にとって
最重要な製品開発の一つであることは間違いない。今までと比べてコストは
ほぼ半減しなければ収益が確保できないはずで,つまり現状の延長ではとても
コスト目標は達成できない。鈴木は,樹脂成形か何かで,コスト削減に大きく
貢献するような新技術を探さなければ,と考えていた。

 そんな時に目についたのが「黒須成形技術展示会」のポスターだった。
技術展示会とは,取引がある,もしくは新規の取引開始の候補になっている
サプライヤーが,鈴木の会社のような大手企業に対して行う新技術の紹介の
“場”である。設計者は普段,サプライヤーの新技術の情報に触れられる場面は
あまりない。サプライヤーの技術部のスタッフとは毎日のように顔を合わせている
にも関わらず,どうしても日常業務を優先してしまうからだ。技術展示会は,
エンジニアが新技術の動向を知るにはたいへんよい機会だ。

 技術展示会は,サプライヤーからの依頼を受けて購買部が開催する。主催した
購買部の黒須成形担当は鈴木もよく知っている田中である。田中はこのような
展示会を定期的によく開催しており,2カ月前にもまだ取引がない中国の
サプライヤーの技術展示会を開催していた。

「黒須成形技術展示会会場」という案内を横目に,鈴木は受付を済ませて会場に
入っていった。会場の中には見たことがある顔が多くいた。購買部の田中も,
スーツ姿の黒須のお偉いさんと話をしていた。

「ふーん,樹脂成形といってもいろいろやっているんだなあ」。鈴木は説明員から
いろいろと説明を聞きながら感心していた。黒須成形はあまり大きな企業ではない。
売上高100億円程度の,中小企業と中堅企業の境界にあるような会社である。
当然のことながら研究所のような組織もなく,設計者が日常業務の傍ら新技術,
基礎技術研究を行っているのに,これだけのものを出してくる。やはり技術開発
というのは製造業にとってはものづくりと同じくらい重要なんだな,と改めて鈴木
は感じた。

「鈴木さん,よく来てくれたね」。購買部の田中が鈴木に声をかけてきた。
「あっ田中さん,どうも。いろいろ参考になりますね」。鈴木が答える。
「そうだね,技術展示会というのはとても地味な活動だけど,鈴木さんのような
忙しいエンジニアさんにサプライヤーの技術を知ってもらういい機会だからね。
黒須も気合いが入っているよ。彼らは中国進出に後れをとっているから,
どうしてもそのハンデを技術力で埋めたいと考えているんだ。あっ紹介するよ。
黒須の社長と取締役技術部長が来ているんだ。会ったことないだろ?」

「えっ,そんな偉い方と名刺交換だなんて,ちょっと気おくれしてしまいます」。
「柄にもないこと言うんじゃないよ」田中はそう言って,鈴木を黒須成形の社長と
取締役技術部長に紹介した。田中は黒須の2人に鈴木をこう紹介した。
「彼は若手エンジニアの中でも勉強熱心な将来の弊社を担う設計者です」。

設計に必要な情報って何だ?

 鈴木を黒須成形の上層部に紹介した後,田中は鈴木に話しかける。
「ところで,今度のハイエンド機種,鈴木さん担当だってね。相当コスト厳しいん
だろ?どうするんだ?」
「いや,まだどうなるか詳細は分からないんですが,まあコストが厳しいのは
いつものことですから」。鈴木が答える。
「田中さん,あそこに展示している技術あるだろ。あれ試してみたらどうだ?」

 そこはアルミ材インサートと異種材料の2色成形の一体成型の技術を紹介
しているコーナーである。そのコーナーは人だかりしていた。多くのエンジニア
の他にその中に設計部出身の鈴木の先輩である開発購買グループの前田
の姿もあった。

 田中は続ける。「まだ量産化されたものはない,また世界中でもあの技術を
持っている企業はほとんどない。でもトライしてみる価値はあると思う。どうだ?」

 鈴木が担当している躯体は,複数の樹脂部品と金属プレス部品で組み立てた
ものだ。組立作業性を考慮した設計とも言えるが,それよりも躯体の内装と外装
に求められる要求機能が異なり,また強度を保持するために多くの部品で構成
されている。これがもし一体化できるとなれば大きなコストメリットにつながる。

 それにしても,と鈴木は思った。田中さんは何で私が探している技術が分かって
いるのだろう? 「田中さん,面白いですね。ところで話は変わるんですが,何で
田中さんは私が探している技術が分かるんですか?」

「…」。田中はしばらくおいてこう聞き返した。「質問の意味が分からないな。
そんなことはバイヤーとしては当たり前のこと。バイヤーは社内に対して
サプライヤーや部品に関する必要な情報を提供する。どんな教科書にも
でていることだ」。
「でもそれって設計がどんな情報が必要なのかわからないと無理ですよね?」
「その通り,それがないまま『あなたの必要そうな情報提供しますよ』って言って
いるのが今の開発購買グループだ」。田中が答える。

「えっ,そうなんですか。開発購買グループって何やっているところなんですか?」
鈴木は少し離れたところにいる前田を見ながらそう聞き返した。

「お前の先輩の前田があそこにいるじゃないか。ちょうどいい,本人に聞いて
みろよ。前田ならいろいろと教えてくれるぞ」。

「田中さん,よろしいですか?」田中が黒須成形の営業に呼ばれ,鈴木は
一人その場に残された。

(次回へ続く)

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162768/

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