2013.11.12号
「バイヤーの仕事って!」

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このメールは、アジル アソシエイツのお客様、
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その他の機会に名刺交換をさせて頂いた方々にお送りしています。

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2013.11.12  ─

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☆今週のメッセージ「バイヤーの仕事って!」
☆「Tさんを悼む」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
☆コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー再掲

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■ 今週のメッセージ「バイヤーの仕事って」
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先日、財務省が主催する政府関係法人の会計事務職員向けの研修で
「民間企業における調達の取組み」について講義をさせていただく機会がありました。

以前より私は「公共調達も民間調達も目的や業務の流れなどは同じであり、
同様の課題を抱えている。たた法的な制約もあって異なる点も数点ある」という
ことをこのメルマガでも書かせていただきました。

この異なる点とは何でしょうか。大きく4点ほど上げられます。
まずは優先順位です。公共調達における一番の優先項目は「公平・公正な取引」です。
所謂「公平な競争機会の提供」になります。一方で民間調達ではやはり
「最適なサプライヤ選定・価格決定」が第一優先となります。

2点目は「調達計画」の考え方です。「公共調達」では計画的な調達という考え方は
稀薄です。つまり案件毎に調達を行うという考え方になります。一方で「民間」では
計画的な調達を行うことでボリュームを集約する等でより有利な調達条件を得ようと
します。もしくはより効率的な調達を行うことを求めます。

3点目は専門組織化です。前回のメルマガでも触れましたが欧米では専門組織である
調達・購買部門が関与する「管理可能な支出金額」を増加させることをより進んだ
調達組織は追及していると書きました。この考え方の根底にあるのは専門家集団による
専門組織を作ることです。公共調達においては契約担当が設置されていますが、彼ら
は調達・購買の専門家ではありません。

4点目はサプライヤマネジメント/ユーザーマネジメントの視点です。継続的な取引を
前提としていない公共調達ではサプライヤとの関係性をどう構築するか、というような
サプライヤマネジメントの必要性はありません。また民間では「開発購買」のように
ユーザー部門に対して仕様の最適化を図るためのサプライヤ提案や仕様の提案が
調達・購買部門の新しい役割として認識され始めていますが、公共調達では「仕様」は
要求元が決めるものです。これもユーザーマネジメントの不要性につながっています。

ここまで整理してみると、何か違和感を感じます。
実は民間調達においても「調達計画」や「専門組織化」「サプライヤマネジメント/
ユーザーマネジメント」が不十分な企業が大半です。つまり民間企業の数年前の状況
は公共とほぼ同じシチュエーションだったということに気が付くのです。

従来民間では社内のどこかの部門から調達してほしいという所謂手配書や要求書が
発行されると、対応可能なサプライヤを(できれば複数社)探し、そのサプライヤに対して
見積り依頼を行い、見積を受領、赤鉛筆型交渉を何度か行った上で最終合意、契約
もしくはPOの発行を行い、納品、検収、支払という一連の業務を行っていました。
それに対して数年前よりコモディティ(品目別)マネジメントという概念が入ってきて
「調達計画」にそってまとめ契約を専門部署でやろうということになります。発注先の
選定に関してもできるだけ調達部門として「コモディティ(品目別)マネジメント」の意思を
入れながら選定を行っていこう、というのが出発点です。
しかし、このような単純は「手配業務」に「コモディティ(品目別)マネジメント」という概念が
入ってきたのはそんなに昔の話ではありません。

一方で「コモディティ(品目別)マネジメント」という概念が入ってきますと「継続的な取引」
を前提とする調達・購買業務になりますし、必ずしも全ての品目で購買企業側が強い
訳でもありません。また場合によっては事業戦略上あまり評価が高くないサプライヤから
調達しなくてはならないない場面も出てきます。そうすると「サプライヤマネジメント」という
概念が必要になってきます。一方で「コモディティ(品目別)マネジメント」を行っていくと
如何に最適な仕様設定を行うことが必須か、という課題にも突き当ります。
このような課題から「ユーザーマネジメント」という概念が出てきます。

「ユーザーマネジメント」と「サプライヤマネジメント」は密接な関係があります。「ユーザー」
はどうしても使いやすい「サプライヤ」との取引をしたがります。一方で調達・購買部門は
適正にサプライヤマネジメントをすることで最適なサプライヤ選定なり関係性づくりを
「ユーザー」に理解させ進めなければなければなりません。一方で「ユーザーマネジメント」
が上手く機能しなければ調達・購買部門は自己中心的な「サプライヤマネジメント」しか
できなくなります。
このように「ユーザーマネジメント」と「サプライヤマネジメント」は相互に密接な関係が
あります。

突き詰めて考えると現代のバイヤーの仕事はこの3つ「コモディティ(品目別)マネジメント」
「サプライヤマネジメント」「ユーザーマネジメント」のマネジメントに帰結します。
またこれらの3つのマネジメントの有機的連携を作りあげることが仕事の殆どとも言えます。
それではこれらの3つのマネジメントにそれぞれどれ位の時間をかけるべきでしょうか。
データ的な裏付けもありませんし、調達している品目や成熟度によっても異なるでしょうが、
この3つのマネジメントに同じ程度に時間をかけるのが理想的な姿と言えるでしょう。
組織によってはこの3つのマネジメントを複数の担当者で分担している場合もありますが、
一度こういう3つのマネジメントの視点で業務を点検するのも面白いのではないでしょうか。

当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ 「Tさんを悼む」
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このような不特定多数の方に対する発信として適切なものかどうか悩みましたが
故人の今までの調達・購買界での業績や素晴らしいお人柄など皆様にお伝えしたく、
誠に失礼ながら仮名(イニシャル)にて書かせていただきます。

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Tさんの訃報を聞いたのは2週間前のことでした。海外出張中のまさに不慮の事故
による急逝でした。何かの間違いだろう、と何度も言い聞かせました。
しかしTさんはご遺体となってご自宅に戻られました。
この2週間は私にとっても失意の中で過ごした2週間でありました。本当に残念です。

Tさんとは、2005年秋に開催した「第2回購買ネットワーク会」で初めてお会いさせて
いただきました。第一印象は「真面目」。しかし話しをする機会が増えるに従って
「真面目」だけでなく「熱意に溢れる」「やんちゃ」で「優秀な」方だという思いを持ちました。
そんな中一番最初に「購買ネットワーク会」の幹事を引き受けてくださったのがTさんです。
購買ネットワーク会は私と坂口さんが2005年に立上げた非営利の購買交流会です。
我々としては自分達だけでできることは限界があるために早い時期に現役のバイヤー
の皆様のご支援が必要だと感じており、幹事を募っていました。
その会の幹事を真先にお引き受けくださったのがTさんでした。Tさんは同時に第3回の
購買ネットワーク会で記念すべき、初めてのプレゼンターをお引き受けくださいました。

テーマは「バイヤーのスキルってなんだってんでぇ」

Tさんはその後も後輩やネットワーク会で年下の方々への指導に誰よりもお力を
注いできました。多くの後輩や部下の方々が購買ネットワーク会に参加しました。
これもTさんの素晴らしさを物語るトピックでしょう。
その後Tさんは岡山に転勤なさいましたが、そこで「中四国購買ネットワーク会」の立上げ
をなさいました。私も2度程お伺いしましたが、少人数ではあるものの全国で一番「質」
の高い購買ネットワーク会です。(断言します)
これもTさんの思いによるところが大きいでしょう。
今年の4月に東京に転勤先から戻って来られてからは、あまりお会いする機会は多く
なかったものの、今年立ち上げた調達購買改革推進者勉強会でもご活躍なされ、
会社においてもマネジメント人材としてのご活躍がより一層期待されておられる
ポジションにつかれたとのことで、将来の調達・購買部門出身のマネジメントになられる
ことを私は心の中で期待しておりました。

Tさんはこのように会社だけでなく調達・購買界でも多くの業績を残されましたが、
私が真先に思いだしますのは、Tさんが誰からも親しみを持たれる方だったことです。
本当に誰からも慕われ、親しみを持たれ、愛される存在でした。
Tさんのことを一言で表しますと「誰からも尊敬される人物」と言いたいです。
月並みな表現ですが「尊敬される人物」と言い切れる方は多くありません。
「誰からも尊敬される人物」であるためには、「人柄」「熱意」「優秀さ」「リーダーシップ」
の4つを兼ね備えていなければなりません。Tさんの何かを成し遂げたいという「熱意」
それを実行する「リーダーシップ」そして長年の経験だけでなくアカデミックな知識や
スキルを兼ね備える「優秀さ」、この3つを兼ね備える方は中々いらっしゃいません。

またTさんのもっとも慕われる理由であるのが「人柄」です。いつもニコニコ温和な笑顔を
浮かべ温厚な話し方をされ、誰もが惹かれてしまう「人柄」は真似できるものではありません。
今でも「熱く語り合い」ながらも合間に見せる笑顔を思い出します。

Tさんのご家族のご悲嘆はいかばかりでありましょう。奥様、お子様だけでなく、ご両親、
御兄弟の方々には申し上げる言葉もございません。今はただ個人のご冥福を祈るばかり
です。お悔やみ申し上げます。

私としてはTさんの御意思を引き継いで多少でも調達・購買界の発展に寄与し続ければ
と思っております。
Tさん、見守ってくださいね!またこれからも叱咤激励してくださいね!

平成25年11月12日
株式会社アジルアソシエイツ
野町 直弘 拝


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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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今回12月6日金曜実施の
『調達・購買・資材・契約部門長向け「調達・購買改革リーダー研修」』に調達界の
カリスマ改革推進者にゲストで講演いただくことになりました。
詳細につきましては下記までお問合せください。
info-ag@agile-associates.com(野町)

皆様の一層のお申込をお待ちしております。

<<基礎セミナー>>
 『調達・購買業務基礎』
     参加費:33,000円(税別)
     日 程: 第一回 2013年11月13日(水)
           第二回 2014年 1月17日(金)
第三回 2014年 3月14日(金)
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「アジルアソシエイツの名物セミナーです。
   購買担当者としての心構えから技法・手法の基礎を学べます!」

 『経費削減・間接材購買入門』
     参加費:33,000円(税別)
     日 程: 2014年 3月20日(木)
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「経費購買、間接材購買の草分け的存在が教えるコスト削減のコツが
   評判です!」

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 『コスト削減手法と戦略ソーシング』
     参加費:47,000円(税別)
     日 程: 2013年 12月13日(金)
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  「一日でコスト削減手法の実際が学べます」

 『調達・購買・資材・契約部門の「中堅社員(バイヤー)のための育成研修』
     参加費:47,000円(税別)
     日 程: 2013年 11月22日(金)
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「購買経験3-10年程度の中堅バイヤー向けのプログラムです!」

 『経費削減・間接材・サービス商材購買業務改革』
     参加費:47,000円(税別)
     日 程: 2014年2月21日(金)
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「経費削減活動や間接材購買部門の立上げなどのノウハウが学べます」
  
<<購買業務改革リーダー養成セミナー>>
 『調達・購買・資材・契約部門長向け「調達・購買改革リーダー研修」』
     参加費:60,000円(税別)
     日 程:2013年 12月6日(金)
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「経営に貢献する調達・購買部門づくりのためのコツをお教えします」

企業の個別研修をお引き受けします。
ご依頼、ご質問等々は、次のメールアドレスまで!
info-ag@agile-associates.com

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■ コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー
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日経BP社のTech-onサイトに掲載されているコラムですが
改めて皆さんにここでご紹介させていただきます。
2009年に私が執筆しました開発部門と購買部門を巡る話ですが、
今再読しても古さを感じさせません。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162766/

どうぞ楽しんでください。
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第5シリーズ「なぜ海外調達を進めなければならないの!」

第12回

田中は話を聞きながらだんだんとニヤニヤしてきた。鈴木が一通り
話し終わるとこう言った。
 「鈴木さん,それは典型的なパターンかもね。最近はあまり
そういう話は聞かなくなったと思ってたら,最近は設計直接に行くんだ。」
 「典型的なパターン,ですか。」
 「そう,昔の中国サプライヤーの日本企業に対する接し方」。
 「えっ,どういうことですか?」
 「設計部門に直接攻勢を掛ける。多分,日本企業でサプライヤー選定の
決定権を持っているのは購買じゃないことを分かってきたんだな。だから
設計部門や設計担当者に直接攻勢をかける」。
 「そうですか。でもそうはいっても,うちの場合は購買が最終決定権を
持っているでしょ」。
 「よく考えてみなよ。電子部品なんか,メーカー指定しちゃえば
それで決定だよ。あとはどの商社から買うか,だけ。メーカーが四行を指定
してきたらそれで取引先も決定。安心しな,品質問題はそうは起こらないと思う。
今でも生き残っているメーカーだからな。工場を見せなかったのは多分,
最新の設備だけ入っていてガラガラの工場見せて心配されるのを
嫌がったんじゃないかな」。
 「そういうものですか」
 「数年前に中国調達バブルが起きた。どこの企業も大きなコスト削減を
目的に,賃金が低いアジア地域からの調達を推進しようとした時がある。
まあそのころは海外調達=中国調達だったけどね。中国で見本市が
あれば日本企業の購買担当者があふれている,中国のサプライヤー紹介の
ビジネスが立ち上がる,どこの企業も中国サプライヤーへ引き合いを
出していた。結果はともかくとして」。
 「それで,どうだったんですか?」
 「本当に優良なサプライヤー,もしくはそういうポテンシャルのある
サプライヤーを開拓しようと努力した企業や,現地調達を引き上げることが
必要なグローバル企業なんかは今でも継続して取引をしている,
また中国からの調達で大きな効果をあげているよ。ただ多くの企業は
安い見積りだけ入手して,国内の既存サプライヤーと価格交渉のネタに
使っただけ。これをあて馬見積という」。
 
「そんな,それってひどいですね」。
 「そう,そのうち中国サプライヤーも真面目に対応しなくなった」。
 「というと…」
 「日本企業向けに高い見積りを提出するようになった」。
 「…,でも当たり前の話ですね。で,高いとか安いとか,中国からの調達は
本当に安くなるんですか? となりの部署に聞いたら,今回は日本の既存
サプライヤーより1割安くなると言っていましたけど」。
 「はははっ。1割だったら間違いなく高くつく。まあ,中国調達が目的化
しているから,それでもいいのかもな」。

「中国調達が目的化?」

 田中が続ける。
 「鈴木さん,そもそも海外調達の目的ってなんだ?」
 「コスト削減じゃないんですか?」
 「そう,それは大きい。じゃあコストって何だ?」
 「部品コストと型費,物流コストですか」
 「そう,部品コストは材料費と加工費に分けられる。物流コストをもっと
正確に言うと,輸送費,通関費用,在庫費用に分けられる。
ただそれだけじゃない。海外調達の場合は発注から納品まで時間が
かかるし,国内企業のように小口配送していたら輸送費がかかって
しょうがないから,納入ロットも自然と大きくなる。そうすると在庫費用が
かさむだけでなく,在庫品がモデルチェンジで要らなくなったら廃棄損が
発生する。これも大きなコスト。それから品質トラブルが起きたときの場合の
費用も想定しなければならない。それ以外にも考えなければならないこと
がある」。
 「為替レートですか?」
 「ピンポン,海外調達が目的化すると,元が切り上げられただけで
効果が半減することもよくある。円建ての契約や為替予約なんかで
リスクを回避することもできるが,それも全部コストに跳ね返る。でもまだ
それだけじゃない。今回の鈴木さんの出張費用とか工程監査,品質監査の
ための経費,中国調達のための調査費用なども合計すると大きなコスト
になる。そういうことを理解した上でメリットがあるのかどうか考える必要が
ある,ということだ」。

 「じゃあ,海外調達はメリットがないのですか?」
 「以前の中国調達バブルの時は,日本国内と比較して部品コストだけで,
だいたい5割低減可能であればトータルコストで3割削減は堅いといわれて
いた。今は多分部品コストで2割安くてトントン,2割以上であればメリットあり,
という感じかな」。
 「じゃあ,1割っていってたあの部品は安くないじゃないですか」。
 「そうだね。まあ詳細が分からないから何とも言えないけどな」。
 「じゃあ,何で無理やり海外から苦労して調達するのか分からない
じゃないですか」。
 「そう,だから中国調達が目的化しているんだ。いろいろな会社で
海外調達比率何%という数値目標を設定している。うちもそうだよ。
海外調達が安いという神話がまだ生きているということだ」。
 「そんないい加減なものですか。」

 「鈴木さん,じゃあもう一つ聞くけど,何で海外で生産すると安くなる
のか考えたことがあるか? 基本的には日本で造るのと原材料は同じ,
設備も同じ,工法も同じだとしたら」。
 「そりゃあ,物価の違いでしょう。要するに賃金が安いからですよね。」
 「そう。じゃあ日本と中国の賃金格差っていくらくらいあるのか知っている?」
 「いや,分かりません」。
 「2000年当時でだいたい1万元といわれていたので,その当時の
為替レートが1元14円として14万円,日本の平均年収はだいたい400万円
くらいといわれているから,だいたい30分の1程度」。
 「そんなに安いんですか!」
 「でもこれは農村部などのデータも含まれているから,そのまま比較して
安いと判断することは難しいけどね。また中国の平均賃金は2000年以降,
2006年まででだいたい倍増しているといわれている。中国の最低賃金
保証額は法律で定められていて,年々10%前後上昇しているんだ」。
 「やっぱりオリンピックとかの影響もあるんですかね?」
 「そうだね。ただ,ここで考えなきゃならないのは,経済成長を続ければ
いつかは人件費は高騰するということ。生産性が高まれば通貨が高くなる。
つまり,人件費の差で安い,という状態は長続きしない。苦労して
サプライヤーを育成して,ようやっと品質が安定したころには,人件費の
上昇に為替レートの変動が加わって,メリットが相当目減りしてしまう,
といった状況も十分考えられる」。
 「なるほど,考えてみれば当たり前のことですね」。
 「その通り。でも,その当たり前のことが忘れ去られてしまう。海外調達
自体が目的化してしまうから」。

(次回へ続く)

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162768/

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