2013.10.29号
「管理可能な支出を増大せよ!」

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このメールは、アジル アソシエイツのお客様、
アジルアソシエイツが講演するセミナーにお越し頂いた方々、
その他の機会に名刺交換をさせて頂いた方々にお送りしています。

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2013.10.29  ─

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☆今週のメッセージ「管理可能な支出を増大せよ!」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
☆コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー再掲

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■ 今週のメッセージ「管理可能な支出を増大せよ!」
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ある企業の調達購買部門のパフォーマンスを評価する上で何らかの指標を持って
評価するとしたらどのような指標が上げられるでしょうか。
日本企業の場合は間違いなく「コスト削減」でしょう。しかし「コスト削減」も「額」
なのか「率」なのか、によっても異なりますし、コスト上昇抑制を評価するのか
しないのかによっても評価は異なってきます。またそれが大きければ良いか、
というと今ままで調達業務が整備されていない企業が取組み始めた時と
既にもう何十年と調達業務に力を入れている企業では前者の方が当然ながら
大きい額や率が実績として出てくるものです。またあまりにも大きな額や率が出てくれば
それこそ「今まで何やっていたんだ」となりかねません。

多くの企業では年度予算としてコスト削減の目標を持ちそれに対して達成したか
未達だったかということで評価をしているでしょうが、達成率や、ましてやコスト削減額
や率を横並びにして他社比較することはできませんし、比較したところで意味が
ありません。

手元に米国のArdent Partnersというサプライマネジメントのコンサルティング、
調査会社が発行した”Keeping Score”というレポートがあります。
彼らはこのレポートの中で企業の調達購買部門のパフォーマンスを測る指標
として取り上げているのが「管理可能な支出」です。
これは英語では”Spend Under Management”というもので「企業の全外部
支出(直接材、間接材、サービス、設備投資含む)のうち調達・購買部門が契約に
関わっている(あるいは影響を与えている)比率」と定義してます。
またArdent Partneesの調査によると調達・購買部門が新たに関わった支出に
関しては平均して6%〜12%のベネフィットが出る。と書かれています。
つまりこれだけ高いベネフィットを上げられるのだから、支出範囲を広げることが
望ましいということなのです。「管理可能な支出」の範囲を増大することは単に
コスト削減だけでなく、購買統制面や業務効率面でもメリットにつながります。

2012年の約270の米国企業に対するアンケート結果「管理可能な支出」の企業平均は
60.6%となっています。また2011年のコスト削減実績は平均で5.8%、2012年のコスト削減
目標の平均は6.6%となっています。コスト削減実績や目標が数年前よりも低く設定
されているのは、既に大きなコスト削減効果を得るための機会が実行されたためと
レポートでは述べています。

つまり、日本でも同様ですが、例えば新たに間接材やサービス商材の集中購買を
進めコスト削減の大きな効果を刈り取った後にはコスト削減額や率が低くなるのは
止むを得ないということなのでしょう。

Ardent Parnersは「管理可能な支出」が増加するほど優秀な調達組織である、
と述べています。そういう点で「管理可能な支出」を最も主要な指標と捉えているのです。
彼らは調査対象企業の上位20%の企業を「ベストインクラス」企業と呼び、
「管理可能な支出」比率は平均が60.6%に対して85%以上の企業を「ベストインクラス」企業
と呼んでいます。
また「管理可能な支出」比率が高い企業ほど高いコスト削減率をあげていると述べて
います。(平均5.8%に対し「ベストインクラス」企業は6.3%)
一方で今後の方向性としては過去3年間の高いコスト削減率や額に対して目標も実績も
低くなる方向であるとしています。これは市場価格が底入れしていることや、短期的で
大きなコスト削減機会が既に刈り取られていることをその理由として上げています。
こういう状況下においてCPO(調達担当役員)が重視すべきなのは「管理可能な支出」を
増大させることや、サプライヤとの関係性強化といった方向に向かうべきである、という
ことをこのレポートでは強調しています。

翻って日本企業においてはどうでしょうか?まずはこの「管理可能な支出」の比率を
指標として管理している企業自体少数でしょう。やはりコスト削減額や率、
取引サプライヤの数を戦略的な指標としている企業が殆どでしょう。
また何もかも調達・購買部門が関与すべきなのか、という各論もでてくるでしょう。
2000年代中ごろからの間接材・サービス材などの集中購買化、調達部門による関与
は日本企業でも当たり前のように進められました。しかし一方でコスト削減活動の
「遣り尽した感」は否めなせん。この先何を目標として成熟した調達・購買部門を作って
いくのか、という指針を考える上で参考になる一つの考え方だと言えます。

当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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今回12月6日金曜実施の
『調達・購買・資材・契約部門長向け「調達・購買改革リーダー研修」』に調達界の
カリスマ改革推進者にゲストで講演いただくことになりました。
詳細につきましては下記までお問合せください。
info-ag@agile-associates.com(野町)

皆様の一層のお申込をお待ちしております。

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 『調達・購買業務基礎』
     参加費:33,000円(税別)
     日 程: 第一回 2013年11月13日(水)
           第二回 2014年 1月17日(金)
第三回 2014年 3月14日(金)
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
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   購買担当者としての心構えから技法・手法の基礎を学べます!」

 『経費削減・間接材購買入門』
     参加費:33,000円(税別)
     日 程: 2014年 3月20日(木)
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 『コスト削減手法と戦略ソーシング』
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     日 程: 2013年 12月13日(金)
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  「一日でコスト削減手法の実際が学べます」

 『調達・購買・資材・契約部門の「中堅社員(バイヤー)のための育成研修』
     参加費:47,000円(税別)
     日 程: 2013年 11月22日(金)
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     日 程: 2014年2月21日(金)
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<<購買業務改革リーダー養成セミナー>>
 『調達・購買・資材・契約部門長向け「調達・購買改革リーダー研修」』
     参加費:60,000円(税別)
     日 程:2013年 12月6日(金)
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  「経営に貢献する調達・購買部門づくりのためのコツをお教えします」

企業の個別研修をお引き受けします。
ご依頼、ご質問等々は、次のメールアドレスまで!
info-ag@agile-associates.com

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■ コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー
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日経BP社のTech-onサイトに掲載されているコラムですが
改めて皆さんにここでご紹介させていただきます。
2009年に私が執筆しました開発部門と購買部門を巡る話ですが、
今再読しても古さを感じさせません。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162766/

どうぞ楽しんでください。
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第5シリーズ「なぜ海外調達を進めなければならないの!」

第11回
「中国に行ってきてくれないか?」
 このものがたりの主人公である鈴木孝は総合電気メーカー「霜月電機」の入社
3年目のエンジニアである。担当していた新機種のデジタルカメラの躯体設計の
量産化が終わり,仕事が一段落ついたところだった。
こういう時は自己研さんのチャンスだ。先輩エンジニアの仕事っぷりを注意深く
観察したり,担当部品のサプライヤーを訪問して製造工程を見たり,技術部門
の方から新技術開発の情報を聞いたり,情報収集を行うのにはうってつけの
時期である。

 鈴木はふと購買部の田中の言葉を思い出していた。
「鈴木さん,いつか教えてくれよ。設計の役割って何なのか?」
一ヵ月前に田中と話をしていた時に投げかけられた言葉である。
 「エンジニアのプライドと役割か…」

 鈴木はいつも田中に怒られ,謝り続けながらも田中のことを慕っている。
田中の言動には裏表がないからだ。田中が「以前,購買部はエンジニアから
見たら一段どころか二段下に見られていた」と言っていたが,今はどうだろうか?
 少なくとも鈴木はそうは思っていないし,こういう時期に自分の技術知識を高め
なければならないという思いも田中の影響が大きい,と感じていた。

 最近では開発者出身の購買部員も増えているようだ。何でも「開発購買」なる
ものを推進するとの触れ込みで,結構な人数が購買部開発購買グループに
異動している。鈴木の先輩の一人の前田も,2ヵ月前に異動したばかりだ。
「最近,前田さんと話していないな。元気かな。どんな仕事やっているのかな。」

 「鈴木さん,ちょっと来てくれないか?」
 そんなことを考えているうちに,普段はほとんど話をしたこともない部長の島田
から部屋に呼ばれた。
 鈴木は何だろう,と思いながら,部長の部屋に向かった。

 島田部長の部屋には鈴木の直属の上司である課長の川根もいた。
 「鈴木さん,中国に行ってきてくれないか。」島田がこう言った。
 「えっ,中国ですか。それは突然ですね,いつですか」。

 「来週の水曜日から週末まで。隣の課の三田主任が行く予定だったのだけど,
体調を壊して行けなくなったので代役だ。君一人で行ってきてほしい」。島田が
続ける。
(マジかよ…)鈴木が口に出さずに思う。

 「うちと関係の深い四行商事ってしっているだろう。あそこ経由の話なんだけど,
中国の電子部品メーカーの売り込みが来ている。ぜひ工場に来てくれ,と,
かなりしつこいんだ。どうせ行かせるのであれば次世代の設計を担う若手が
いいだろうと川根課長とも話していたんだ」。
(えっ,俺が次世代を担う人材か。まんざらでもないな。)
「川根課長から聞いたんだが,鈴木くんは中国に行ったことがあるんだろ。
中国語もしゃべれると聞いたぞ」。
(あっ,そういうこと。まあ考えてみればねえ)「いや,中国は卒業旅行で2ヵ月
行っただけで留学とか住んだ経験があるとかではないんですけど」。鈴木が答える。
「それでも訪問経験がある人とない人だと全然違うからな。あっ安心してくれ,
四行商事の現地駐在員が随行してくれるから,何も心配しなくていいから」。
(何だ,結局部長の顔を立てるための出張じゃないか。)

 「スケジュールは空いているか。空いてなくても調整してほしいのだが」川根が
鈴木に聞く。
 「まあ一応今のところ予定は入っていないのですが…」鈴木が答える。
 「じゃあ,頼むよ。とりあえず四行の営業について回っていればいいから」。
 「…はい。わかりました。」

 開発部が海外サプライヤーと会うことはよくあることだ。だいたいは今回の話
のように商社経由か,購買部経由で紹介されるのだが,まれに直接コンタクトが
あることもある。鈴木は先方の持っている技術が有益なものだと思ったら,
できるだけ話を聞くようにしている。つい先日も欧州のある機構部品メーカーから
直接売り込みの話が舞い込んできて,6月に会う予定にしていた。

 「まあ,いい機会か,中国かあ,懐かしいなあ。でも中国のどこなんだろう。
確認するの忘れたけど。」

「今回の出張は何だったんだろう」

 一週間後,鈴木は上海に出張に行った。帰りの飛行機の中で鈴木は
つぶやいた。
「今回の出張は,何だったんだろう?」

 水曜日に上海に着くなり,宴席だった。まだ午後3時すぎだというのに,空港で
待っていた四行商事の駐在員にいきなり連れていかれたのが宴会会場の
レストラン。中国企業側からは10人近いメンバーがそろっていた。宴席は夜中
まで続いた。

 翌日は上海の中心街で,中国企業の技術プレゼンを1時間聞いた。正直な
ところ鈴木の担当部品ではないので,何が差別化された技術なのか,よく
分からなかった。どうもこの中国企業からの部品調達は半ば既定のもの
として開発が進んでいるらしい。いくつかのトールゲートと試験データが提供された。

 午後からいよいよ工場見学だ,と思っていたのだが,工場が遠方で,車で
片道2時間かかるという。また昨今の世界不況で稼働調整しているため,夕方には
工場は動いていないとの話になって,工場見学は中国企業側の一方的都合で中止
になった。

 それでも鈴木は,どうしても工場を見たいと考え,翌日の金曜の帰国便を変更
しても構わないから行かせてくれ,とまで言い張った。しかし四行商事の駐在員から
「工場の写真とかレイアウト,工程図,稼働状況などの情報をまとめた資料を後日
お渡ししますから」と言われ,断念した。

 そしてその日も昼すぎから宴席。鈴木は前日の宴席の飲み過ぎで頭がクラクラ
していたものの,宴席はその日も夜中まで続いた。

 金曜日は四行商事の駐在員が用意した車で市内観光。そして空港へ。

 「これだったら,上海に宴会しに行ったのも同じじゃないか」。鈴木は再び
つぶやいた。

「典型的なパターン?」

 週が明け,鈴木が出社すると,既に出社していた隣の課の三田主任から声を
掛けられる。
 「鈴木さん,上海どうだった? すみませんね。代行してもらっちゃって」。
 「どうだったというか…,食事はさすがに美味しかったです。でも工場見られ
なかったんですけど。何か動いていないとかで」。
 「そうか。でもいいんだよ。最近は中国からの調達を増やせって大号令が
掛かっているし,四行の顔も立てなければならないし,例の部品の採用は
決まっていることだし。今回はあくまでも儀式みたいなものだから」。
 「あれっ,三田主任,体調は大丈夫なのですか? 体調が悪くて上海
行けないって伺ったんですけど」。
 「あ? あ〜,大分良くなったから。おかげ様で。ありがとう」。
 「ところで,品質とか納入とか問題ないんですか? 初めて付き合う取引先でしょ」。
 「まあ,大丈夫だと思うよ。四行を通して買うことだし」。
 「そうですか。ところでコストはいくら位安くなるんですか?」
 「現状の日本からの購入コストに対して,1割くらい安くなる。やっぱり中国は安いね」。
 「購買には話しているんですか?」
 「もちろんね。購買も積極的に採用してほしいみたいだよ。彼らも海外調達増やせ
って言われているみたいだから」。
 「そーですか」。

 数日後,鈴木は購買部に顔を出した。田中に今回の中国出張の話をしようと
思ったからだ。田中はいつものように眉間にしわをよせ,しかめっ面でパソコンの
画面を見ながら何か作業をしていた。
 「田中さん,鈴木です。お久しぶりです。」
 田中がパソコンの画面から顔を離し,鈴木の顔を見る。
 「おー,鈴木さんか,元気か?」
 「田中さん,ちょっとお時間いいですか」。
 「いいよ。じゃあそこに座れよ」。田中は机の脇に置いてあった丸椅子を指差した。

 「この前中国に出張してきたんですけど。どうも何か腑におちなくて,
これで良かったのかどうかと,やっぱり田中さんに相談するのがよいかな,
と思ったので…」鈴木はこれまでのいきさつを田中に話した。

(次回へ続く)

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162768/

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