2013.8.6号
「研修だけでは得られないこと」

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このメールは、アジル アソシエイツのお客様、
アジルアソシエイツが講演するセミナーにお越し頂いた方々、
その他の機会に名刺交換をさせて頂いた方々にお送りしています。

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2013.08.06  ─

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☆今週のメッセージ「研修だけでは得られないこと」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
☆コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー再掲

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■ 今週のメッセージ「研修だけでは得られないこと」
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先日私が尊敬する先輩バイヤーの講演を聞きに行きました。
この方がおっしゃったことの一つに「バイヤーは交渉前に十分な準備を行う必要がある」と
いう話を強調していました。準備の中には例えば対象となる購買品のコストがいくら位であるか、
事前に推計しておくこと、も含まれています。
そういうお話しをされていた中である出席者の方からこういう質問がありました。
「そういうことができる能力のあるバイヤーは限られた人間で大多数はやり方がわからない。
どうやってコストを調べればよいのでしょうか?」
それに対してこの先輩バイヤーがまず答えたのは「人材のスキル向上のためにはバイヤー向け
の研修をもっと充実させる必要がある」ということでした。

確かに研修をすることでコスト分析などのコスト推計の一般的な方法やヒントを知ることはできます。
しかし重要なのはコスト分析のためのデータをどのように集めるかですしデータが集められなければ
分析を実施することはできません。
このように研修をうけることがそのまま解決策につながるとは言えません。例えばどんなに学ぶ機会
を与えても学ぶ気がない、もしくは実践しようとする意識がなければ実行にはつながらないのです。
日本企業は研修にあまり時間とお金をかけていないのでそこにもっとかけるべきだ、ということは
否定しません。しかし、部員全員に研修を受けさせることができる企業は限られているでしょう。

2011年まで実施していた調達購買部門長向け調査の中で「経営陣からの期待に応えられていない
調達購買部門の理由は何か」を聞いています。
そこでは約70%の企業が人材の量とスキルが不足しているということを理由として上げています。
そうすると教育のためのプログラムを作り、研修をうけさせれば問題が解決するのか、というと
あまりにも短絡的すぎますし実際には解決しないでしょう。

そうこうするうちに同じ参加者が別の質問をしました「だとすると技術やモノが分かる技術者の方
が調達・購買門にはむいているのですか?」
数年前の同じ調査でバイヤーの事務系の比率は60%程度だったと記憶しています。
私自身も私の周りの優秀なバイヤーも事務系の方も多くおります。そう考えると
「そりゃあ技術が分かっていれば有利だよね」程度の話でしょう。

その質問に対してその先輩バイヤーはこう答えました。「そんなことはない。『コモンセンス』を持って
いれば良い、と。」
そう『コモンセンス』なんです。『コモンセンス』は日本語では常識と訳されますが、ここで言っている
意味は「常識」とはやや違った意味合いがあります。正にCommon「共通の」
Sense「感覚、価値観、判断力」という意味です。
つまり研修をうけるにしてもそこから何かを学ぼうという(当たり前の)姿勢です。
また交渉前の準備における交渉計画の作成や落としどころの推計なども(常識的な)判断力と
知恵があればやり方は自分で考えることができます。

研修で教える手法はあくまでも業務のやり方のヒントを教えるだけであり、実行させることには
つながりません。研修の翌日から学んだことを試行してみるためにはそれを試行しようとする
(常識的な)問題意識や価値観がなければやらないでしょう。
また応用することや手法を考えることも『コモンセンス』があれば殆ど解決可能と思われます。
磨かなければならないのはこの『コモンセンス』なのです。『コモンセンス』を持っている人は
研修でヒントを学ぶと自分で応用し手法を積上げていけるのです。

何でも人から教えてもらうのではなく『コモンセンス』を鍛えて自ら考える力を持つことがバイヤー
には求められているのではないでしょうか。


当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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2013年度下期(10月〜2014年3月)開催のプログラムは今週中に発表いたします。
追ってメルマガやホームページでご案内させていただきますのでよろしくお願い申し上げます。

2013年度上期開催のプログラムをご案内します。

 『調達・購買人材向け交渉力』
     参加費:47,000円(税別)
     日 程:2013年 8月23日(金):定員間近です。早めのお申込みをお願いします。
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「交渉プロセスを管理することで本当の交渉力を身につけます」
  
 『経費削減・間接材・サービス商材購買業務改革』
     参加費:47,000円(税別)
     日 程:2013年 9月6日(金)
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「経費削減活動や間接材購買部門の立上げなどのノウハウが学べます」

<<基礎セミナー>>
 『調達・購買業務基礎』
     参加費:33,000円(税別)
     日 程:第一回 2013年 5月17日(金):終了しました。
          第二回 2013年 7月12日(金):終了しました。
          第三回 2013年 9月13日(金):参加者募集中です。
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「アジルアソシエイツの名物セミナーです。
   購買担当者としての心構えから技法・手法の基礎を学べます!」

皆様のお申込をお待ちしております。

企業の個別研修をお引き受けします。
ご依頼、ご質問等々は、次のメールアドレスまで!
info-ag@agile-associates.com

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■ コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー
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日経BP社のTech-onサイトに掲載されているコラムですが
改めて皆さんにここでご紹介させていただきます。
2009年に私が執筆しました開発部門と購買部門を巡る話ですが、
今再読しても古さを感じさせません。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162766/

どうぞ楽しんでください。
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第5回「海外バイヤーと渡り合う(1)」

「生産対応不可能である!」

 この物語の主人公である鈴木孝は総合電気メーカー「霜月電機」の入社3年目のエンジニア
である。彼は現在,所属する事業部の主力新商品である,小型・軽量のデジタルビデオカメラ
の開発にかかわっている。
 鈴木が担当していた新商品の,日本での生産立ち上げは無事終わった。しかし,今回の製品
では米国向けの販売も日本向けと同程度の量を見込んでいる。米国向けの生産は,
米国ミズーリ州の工場で担当することになっている。
 米国向け生産は,日本での生産から半年遅れの日程であり,鈴木は米国仕様の設計図面の
出図を終わったところであった。

 数日後の朝,鈴木が出社すると,会ったこともない外国人から英文メールが来ていた。
どうやらミズーリ工場の購買部にいるMike Petersonという人物からのメールのようだ。鈴木は
英語が得意な方ではないが,Mikeからのメールをプリントアウトし,辞書片手にその内容を
確認した。どうやらこういう内容のようだ。

 「鈴木さんが設計出図した今度の新製品の躯体だが,サプライヤのミズーリプラスチックス社
から,設計変更が必要であるとの連絡をもらっている。それによれば,今回の躯体の形状が
複雑なため,成形シミュレーションを行ってみたところ樹脂の流れに問題があり,不良品が多量に
発生する可能性が高い。したがって一体成型ではなく,躯体を分割してほしい。
この修正は製品生産には不可欠であり,もし修正できない場合には生産対応は不可能である。
1次試作間近であり,今週いっぱいに設計変更出図をお願いしたい。設計変更依頼書は追って
メールで送付する」。

 メールの最後にMike Petersonの署名とともに,C.P.M.という文字が書いてあった。

 「えっ,…『もし修正できない場合には生産対応不可能である』…マジかよ?」
 メールのあて先は鈴木だけになっている。鈴木はあわてて先輩エンジニアの佐藤にそのメール
を転送した。
 「佐藤さん,今メール送ったんですけど。Mike Petersonって人知っています? ミズーリ工場の
Procurement Div.なんで購買の人だと思うんですけど」。

 「今読んでいる。Peterson? 知らないな。アメリカ人って主張だけははっきりしているから,
気をつけろよ。そもそも今から設計変更なんて無理だよ。間に合うわけがない。それに分割って,
どこから分割するんだよ。分割したら合わせ面を隠すための部品が新しく必要になってくるし,
そもそもマーケティングが許さないよ。また言われるぜ。質感が損なわれますって。
メールで断っておけよ」。

「分かりました」。
 鈴木はまず日本語で返信メールを下書きした。佐藤が挙げていた理由数項目に加えて,
日本のサプライヤでは対応している,どこか対応できるサプライヤを探してほしい,という内容
を付け加えた。

 さて,英語に訳さなくては。
 「やれやれ,やっぱり最近のエンジニアは英語もできなきゃダメだな」。鈴木はそうつぶやき
ながら,どうにかこうにか英語メールを完成させて送信した。

(次回へ続く)

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162768/

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