2013.8.20号
「入札制度の限界と競争環境の整備」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2013.08.20  ─

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☆今週のメッセージ「入札制度の限界と競争環境の整備」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
☆コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー再掲

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■ 今週のメッセージ「入札制度の限界と競争環境の整備」
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先日会計検査院から発表がありましたが、復興工事入札で不調(入札者がいない)状況が
増えているようです。
具体的には予定価格1千万円以上の工事4538件のうち全体の21.1%に当たる959件で入札
不調が発生しています。内訳としては国の直轄事業では1123件中177件(16%)、被災3県と
21市町の補助事業では3415件中782件(23%)が入札されていないという状況になっています。

新聞によると原因は大きく2つ上げられます。1点目は復興工事に携わる人手不足の問題です。
リーマンショック以降の工事減や公共事業の圧縮によって大勢の作業者が離職したところに
震災が発生して復興工事に携わる職人さんが不足しているそうです。(当然のことながら
人手不足に伴い賃金も5割程度上昇しているそうです)
もう1点は資材の不足です。先ほどの人手不足とともに資材不足はコストの大幅な高騰に
つながっています。コストが上昇したため自治体が示す額では採算に合わないとみる事業者が
増えているのが入札が成立しない(自ら仕事を取りにいかない)原因になっているようです。

最近は自治体も自らこの状況を脱するために入札資格の見直しや審査の簡素化、工期に
猶予期間を設けて作業員を確保しやすくするなどの施策を講じているようです。
民間企業では当たり前に行われているような業界の意見を聞く場を用意するなどの
取組みも始めたようです。

民間でも近年の需給のひっ迫や今後続くであろう新興国企業との競争によりさらに相対的な
買い手としての立場が低下することを考慮し、サプライヤマネジメントの一環として如何に
優秀なサプライヤを囲い込むか、が主要なテーマになりつつあります。
そのために業界やサプライヤの声を聞き有益な情報を提供し、彼らのメリットにつながる
ような取組みをすることが求められているのです。

今回のような入札不調の中、地場建設業者の声を直接聞いた訳ではありませんが、彼らは
多分こう言うに違いありません。「あの時あれだけ仕事が欲しいと言っていたのに結局回って
こなかった。復興工事が重要なのはわかるけど、一時的なモノ。そのために以前のように多くの
職人を抱えるのはリスクが高すぎる。またあの時の二の舞はしたくない。国も自治体もゼネコンも
勝手すぎる。我々が欲しいのは安定的な受注なんだ。」と。

極めて当たり前な話ですが、このような状況下では入札制度は成り立ちません。入札制度は
その案件や仕事をやりたい人や企業がいるから成り立つのです。案件の魅力度が極度に
低かったり、そもそも特定の人や企業にしかできないような案件についてはその前提が崩れて
いるわけですから入札は成り立たないのです。にも関わらず一つ覚えの如く形式的に入札制度に
頼ることは安かろう悪かろうにもつながりかねません。以前このメルマガでも書きましたが
政府系IT調達の失敗のような事態にもつながる可能性があるのです。

それではどうすればよいか。私はある程度民間調達の世界でのサプライヤマネジメントの制度を
取り入れるべきだと考えます。例えば復興工事案件については限定的に地場を中心とした
建設業者さんを組織化して案件毎ではなく、復興工事案件全体で取引先の意見を吸い上げ
ながら工事計画を作っていくように、一部随意契約的な要素を取り入れることが良いので
はないかと考えます。
取引先が今一番知りたいのは工事計画の全体像でありそれを踏まえた職人や資材の確保を
計画的に行いたいからです。

そうすると批判の声が必ず出てきます。「一部の業者を優遇していいのか。」と。いいんです。
もしその建設業者が優秀な業者であり、品質も優れ価格的にも問題がなければ結果的には
皆がハッピーになれるじゃないですか。そもそもサプライヤマネジメントの根底は「えこひいき」の
概念です。T自動車が協力会企業に優先的な発注を行っているのが何で悪いのでしょうか。
それでも良い買い物ができて競争力が保持できるのであれば、入札に拘る必要性は全く
ないでしょう。

ただ、ここで一つだけ気をつけなければならないことがあります。調達・購買部門の唯一の役割
と言ってもいいでしょう。それは「癒着状況に陥らないための競争環境を作る」ことです。
例えば数年に1回取引先の見直しを図る、とか定期的なサプライヤ評価を行って改善を行わせる、
とか価格の適正状況をチェックするために、マーケット価格との比較を行うとか、原価推計を行い
割高を指摘する。あとはサプライヤから提案を募ってそれでコスト削減につなげるというのもある
でしょう。このような施策は競争環境とは言い難いですが緊張環境と言い換えられるでしょう。

主要なサプライヤを指定しそのサプライヤとタイトに組みながら、競争環境や緊張環境を作って
いくことは非常に大切なことです。また調達・購買担当者が考えなければならないことの
主なことと言ってもよいのです。
しかし日頃民間企業の調達・購買担当者は多くの案件を処理することに忙殺されています。また
公共の契約担当者は入札をやることに拘っています。やらなければならないのは
最適なサプライヤの選定と「協調・競争のバランス」を取ることなのです。
とてもシンプルですがそれが本質であり、その目的を達成するためにどうしたらよいかを考える
べきなのです。

当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー
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日経BP社のTech-onサイトに掲載されているコラムですが
改めて皆さんにここでご紹介させていただきます。
2009年に私が執筆しました開発部門と購買部門を巡る話ですが、
今再読しても古さを感じさせません。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162766/

どうぞ楽しんでください。
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第6回「海外バイヤーと渡り合う(2)」

「貴殿が責任を取るのか?」

 鈴木がメールを送信し終わった時は既に午後3時を過ぎていた。つまりほぼ一日中,彼は
米国工場のバイヤーからのメールわずか1通に対応していたことになる。
 夜になり,そろそろ帰ろうかと思った時だった。鈴木のPHSが鳴り出した。電話番号は
「表示不可能」となっている。鈴木は誰かな? と思いながらPHSに出る。

 「もしもし,鈴木です」。
 「Hello, I am calling to Mr. Suzuki ?」英語だ。
 「I am Mike, calling from Missouri Plant」。どうやらマイク何とかという例のバイヤーからの電話
のようだ。
 「○×△△????○○××△△????」
 その後はほとんど聞き取れない。
 鈴木は彼の持っているだけの英語力で「私は英語が苦手だから,とにかくメールをしてくれ」
と伝えた。

 Mikeは最初のうちは機関銃のようにしゃべっていたのだが,そのうち鈴木が理解できていない
と悟ったのか,最後にSee you soon. と言って電話を切った。

 鈴木は取りあえず待つしかないなと思い,パソコンのメーラーにMikeからのメールが来るのを
待っていた。
 既に時間は夜10時を回っており,相談相手の先輩エンジニアの佐藤も帰宅してしまった。

 「来ないな,帰っちゃおうかな」と思った矢先,Mikeからのメールが鈴木の受信箱に落ちた。

 要約するとこういうことのようだ。
 「今回のサプライヤは既にミズーリプラスチックスに決定しており,たとえ本社の要望で
あってもサプライヤ決定の権限は工場の購買にある。設計にサプライヤを変更しろという
権限はない。ミズーリプラスチックの設計変更の要望が飲めないのであれば,品質の保証が
できない。
 サプライヤの工場に不良品の山ができたら貴殿が責任を取るのか? ましてや今回のこの
新製品開発は本社主導のコラボレーション・プロジェクトの一環である。つまり早期に
サプライヤを巻き込み,開発段階から彼らの提案を吸い上げコスト削減を推進する試みである。
コラボレーションPJの狙いに沿って設計変更の提案をしているのに,時間がないという理由で
対応しないというのは正当な理由にならない。とにかく貴殿の部署あてに設計変更依頼を
送付するから,設計の正式な回答を早急にもらいたい」。

 「なんだ,これは。向こうの方が無茶なことを言っているだけじゃないか」。
 鈴木はとにかくすぐにでも相談できそうな相手に相談するべきだと思った。

 佐藤さんに相談してみよう。
 「プー,プー,ただいま電話に出られません。メッセージをどうぞ」。つながらない。

 次に鈴木の頭に思い浮かんだのは,購買部の田中だった。
 「プー,プー」電話に田中が出た。
 「鈴木さんか? 夜遅くまで大変だな。何か用か?」
 「すみません。ちょっと今すぐに伺いたいんですけど」。
 「どうぞ」。いつものぶっきらぼうな返答だった。

      *     *     *

 鈴木は,購買のフロアにまだ残っている田中のところに来た。
 「田中さん,ミズーリ工場のMikeさんって知ってますか?」
 「知ってるよ。最近大手自動車メーカーの購買部から転職してきたヤツだ」。
 「彼からこんなメールが来たんです」。

 田中は鈴木のメールのコピーを受け取ると読みながら笑いだした。
 「わははは,いかにもヤツらの言いそうなことだ。」
 「笑っている場合じゃないですよ。今日一日中かき回されっぱなしですよ。
どうしたらいいんですかね」?


(次回へ続く)

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162768/

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