2013.6.11号
「サプライヤマネジメントとSVR理論」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2013.06.11 ─

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☆今週のメッセージ「サプライヤマネジメントとSVR理論」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
☆コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー再掲

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■ 今週のメッセージ「サプライヤマネジメントとSVR理論」
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「海外調達は難しい」や「グローバル調達は難しい」というキーワードを最近よく聞きます。
しかし私にはピンときません。バイヤーとして世界中から最適なモノを最適なサプライヤから
最適な価格で購入しようとしていたら結果的にそのサプライヤがたまたま海外のサプライヤ
でした。ということですよね。何か難しいですか。

しかし唯一海外のサプライヤとの付合いで日本と大きく異なる点があります。
それは「買う側のプレゼンスの低さ」です。
日本国内で専門的な調達・購買部門を持つような比較的中〜大規模の企業であれば
日本国内のプレゼンスは高いです。サプライヤに会社の説明すらする必要はないでしょう。
つまりサプライヤに売ってもらうための努力はしなくてよかったのです。
しかし、海外だとこれでは通用しません。売ってもらうための努力をしなければ取引できない
のが一般的です。正に「買ってあげる」から「売ってもらう」へ転換しなければならないのです。

こういう世界では、会社のプレゼンスだけでなくバイヤー個々人のプレゼンスが求められます。
つまり「XX株式会社だから・・」ではなく「YYさんだから取引する」という世界なのです。
以前VOS(ボイス・オブ・サプライヤ)について私は「VOSをやることが相手が自分の会社を
どう思っているか知ることにつながる」と書きました。一言で言うと「両想い」なのか「片思い」
なのかが分かるということです。また今後サプライヤマネジメントを進める上で相手の思いを
知ることが非常に重要であることは何度も述べている通りです。

こういう話をある友人としていて面白い話を聞きました。
対人関係の進化論で「SVR理論」というものがあるのだそうです。
これは1977年にマースタインという人が発表した人間関係の深まりをモデル化したものだそうです。
一般に人間関係の深まりは,以下の3つの状態をたどるとされるそうです。
1.S(Stimulus) 外見からの刺激
2.V(Value) 価値観の共有
3.R(Rule) 適合し,役割を担う
これを男女の恋愛を例にとって説明すると、最初は外見から惹かれあい、次に共有の価値観を
持つことで付合いが深まり、結婚を経て最後にはロール(役割)を分担しあうことで関係性が進化
するとのだそうです。

ちょっとかんがえると正に今日のバイヤーとサプライヤの関係そのものです。(特に海外)
また目指さなければならない関係性作りの方向を示唆しているように感じます。

そもそもサプライヤとは両想いであるべきです。
また最初は派手な売り込みや低価格、高品質などのStimulateな関係から取引がスタートすることも
あるでしょう。それはValueを共有する関係にならなければ長続きしません。
しかしロールを分担し合うという関係性ができているバイヤー企業がどれだけあるでしょうか。

ロールを分担するということの根底にはイコールパートナーの意識が欠かせません。
企業としてそれを実現するためにはまずはトップがそう考えなければなりません。
もちろん部門としてもそうですし、バイヤー個人もそうです。
口では「イコールパートナー」と言いながら実は知らず知らずのうちに「買ってやっている」意識が
入っていないでしょうか。
海外に赴任している方曰く、中国のサプライヤは「YYさんのため」という意識が日本よりも強い
とのことです。一緒に井戸を掘った人間に対する信頼は日本以上のモノがあるとも言います。

正にサプライヤマネジメント=対人進化論=恋愛も同じなのだと感じる今日この頃でした。

当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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2013年度上期開催のプログラムをご案内します。
お早目のお申込をお待ちしております。

<<基礎セミナー>>
 『調達・購買業務基礎』
     参加費:33,000円(税別)
     日 程:第一回 2013年 5月17日(金):終了しました。
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         第三回 2013年 9月13日(金)
      お申込・詳細はこちら
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   購買担当者としての心構えから技法・手法の基礎を学べます!」

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     日 程:2013年 6月14日(金):定員間近です。
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  「一日でコスト削減手法の実際が学べます」

 『調達・購買・資材・契約部門の「中堅社員(バイヤー)のための育成研修』
     参加費:47,000円(税別)
     日 程:2013年 6月21日(金):締切り間近です。
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「購買経験3-10年程度の中堅バイヤー向けのプログラムです!」

 『調達・購買人材向け交渉力』
     参加費:47,000円(税別)
     日 程:2013年 8月23日(金)
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      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「交渉プロセスを管理することで本当の交渉力を身につけます」
  
 『経費削減・間接材・サービス商材購買業務改革』
     参加費:47,000円(税別)
     日 程:2013年 9月6日(金)
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「経費削減活動や間接材購買部門の立上げなどのノウハウが学べます」
  
<<購買業務改革リーダー養成セミナー>>
 『調達・購買・資材・契約部門長向け「調達・購買改革リーダー研修」』
     参加費:60,000円(税別)
     日 程:2013年 7月26日(金)
      お申込・詳細はこちら
      http://www.agile-associates.com/train/train.html
  「経営に貢献する調達・購買部門づくりのためのコツをお教えします」


皆様のお申込をお待ちしております。

企業の個別研修をお引き受けします。
ご依頼、ご質問等々は、次のメールアドレスまで!
info-ag@agile-associates.com

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■ コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー
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日経BP社のTech-onサイトに掲載されているコラムですが
改めて皆さんにここでご紹介させていただきます。
2009年に私が執筆しました開発部門と購買部門を巡る話ですが、
今再読しても古さを感じさせません。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162766/

どうぞ楽しんでください。
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第一回「購買部門の怖いベテラン」

「何やってるんだ」!

 鈴木孝はとある総合電気メーカーの入社3年目のエンジニアである。
入社1年目は研修や半年間の工場・販売実習を経て,現在の映像機器事業部の開発部門
へ配属され,先輩社員について回路設計を手伝っていた。その後1年近く回路設計,実装設計
に携わり,現在はある新製品の開発にかかわっている。
 今回の新製品は小型・軽量化されたデジタルビデオカメラであり,鈴木の事業部での主力商品
でもある。鈴木は大学では電気工学を専攻しているものの,新製品開発の一連のプロセスを
経験するのは初めてだ。商品企画〜意匠〜構想設計〜詳細設計〜試作〜量産設計〜量産
〜販売という流れは研修で教わったものの,自らそのプロセスの中に入りこむのは研修とは
わけが違う。
 鈴木は躯体設計のサポートをしていた。躯体はアクリル樹脂の射出成形品であり,自社では
生産設備を持っていない。そもそも射出成形とはどういう工法であるか,鈴木は見たこともない。
デザイン部門から出図された意匠に基づき,先輩から指示をうけた通りにCADで作図を進めている。
 当然のことながら時間的な余裕はない。彼は成形上の制約条件を調べるために,サプライヤー
黒須成形社の技術者と連絡をとった。
ゲストエンジニアとして鈴木のオフィスに長い期間駐在したことがあった安部氏である。
安部氏は30歳代後半のベテランエンジニアであり,鈴木も以前はタバコ部屋で何度か話をした
ことがある。
 鈴木は研修時代の実装設計でも電子部品サプライヤーの営業や技術部門とは何度も
コンタクトしていた。やはり「餅屋は餅屋」であり,先輩に聞くよりも多くの情報が取れる。
だいたい,先輩エンジニアは短時間のアドバイスを仰ぐのも気の毒なくらい,一次プロト(試作)
に向けて連日徹夜が続いている。
 約束の時間の5分前,安部氏が来社したと受付から鈴木のPHSに連絡が入った。
鈴木は,たまたま隣の席に座っていた先輩に話しかけた。
 「躯体の設計打ち合わせで黒須成形の安部さんが来ているのですけど,同席して
いただけませんか」?
 「わかった。ところで購買は同席しないの」?
 「いや,設計仕様の打ち合わせなので購買は必要ないかと思いまして」。
 「購買には黒須成形社発注前提で了解は取れているの」?
 「いや特に連絡していませんけど,何か」?
 「何やってるんだ!躯体の購買担当は田中さんだぞ。すぐクレームが入るぞ!」

「どうやって造るか知ってるか」?

 鈴木は先輩の強い口調に圧倒され,頭が真っ白になってしまった。その時自分のPHSが鳴った。
内線だが見慣れない番号が表示されている。
 「はい,鈴木です」。
 「購買の田中だが,今度の新商品の躯体設計を担当しているのは鈴木さんか」?
 「はいそうですが」。
 「お前,何の権限があって,黒須成形に決めたんだ」?
 「…」
 田中はすごい剣幕で怒っている。その後も田中の言葉は続いたが,鈴木は何も答えられない。
田中は反応がない相手に言ってもしょうがないと思ったのか,やや落ち着いた声で鈴木に聞いた。
 「鈴木さんは何年入社だ」?
 「2004年ですけど」。
 しばらくの無言の後,田中がこう続ける。
 「ちょっと,今すぐこっちへ来い。ただし誰も連れてくるなよ」。
 「すみません。今黒須成形の設計の安部さんが来ているのですけど」。
 「そんなのはいい。俺が話をつけておく」。
 ガシャ。…………

 鈴木は,図面を持って別棟の購買部へ向かう途中,やや落ち着きを取り戻し,いろいろと思い
を巡らせた。サプライヤーの営業や技術の人たちと直接打ち合わせをするのは今までも
当たり前だったし,それで購買から文句を言われたことなんか一度もない。
 「なぜ田中という人はあんなに怒っているのだろう。先輩も先輩だ。いろいろうるさい人は
どこの部署にだっている。一言『田中さんには気をつけろ!』と耳打ちしておいてくれたって
いいのに。
 まあ,この手の人はたいてい,文句を言いたいだけだ。とりあえず謝っておけば,
この先の仕事もスムーズに進むだろう」。

 購買部の田中は40代半ば位に思えた。まだ課長になっていないところから典型的な
現場人間だろうと想像していたが,正に絵に描いたような「職人」というのが鈴木の第一印象
であった。
 「田中さん,鈴木です。今回はいろいろとご迷惑をおかけしてすみませんでした」。
 「迷惑?迷惑なんてかかっていない。最近の若手は要領だけよくて謝ればそれで済む
と思っている。まあ謝りもしない奴も増えているけどな…」。
 それよりも,鈴木さんはサプライヤー選定の権限が購買にあることを知っているか」?
 「…」
 「Yes or No」?
 「知りませんでした」。
怒られることを覚悟しながら鈴木は正直に答えた。
 だが,田中は意外にも怒らなかった。
 「ならしょうがない。購買規定がここにある。これをよく読んでおけ」!
 田中は続ける。
 「ところで,何で今回の部品を黒須成形にしようとしたんだ」?
 「たまたまゲストエンジニアで黒須成形の安部さんと知り合いだったからです。それに…」
 「それに」?
 「まだサプライヤーを決めたわけではなくて,単に設計打ち合わせしたかっただけですし」。
 「おい。見せてみろ」。
 「えっ。何をですか」?
 「図面に決まっているだろう」。
 鈴木は戸惑いながら田中に未完成の図面を見せる。田中は一人でぼそぼそ言いながら
図面を見ている。鈴木は購買部の人間が図面を読めるのを知らなかった。
 しばらくして,田中は顔を上げてこう言い放った。
 「鈴木君はこの部品どうやって造るか知っているのか?」
 「…知りません」
 「だろうな。この図面通りには造れない。アンダーカットが10カ所もある。そもそもどこで
型合わせするかも考えていない」。
 「アンダーカット? 型合わせ」?
 「いいか。これはうちの主力商品の開発だ。月産想定7000台。材質はアクリル。これだけ
の大物躯体でこの数量,意匠部品とくれば,成形方法は射出成形以外考えられない。
成形機は多分600トンくらいだ」。
 鈴木は大学では電子工学を専攻していたため,樹脂成形のやり方などの知識は
全くなかった。「樹脂の成型って,溶かした原料を型でつぶしたりして造るん
じゃないんですか」? 田中は一瞬あっけにとられた顔をしたが,すぐに冷静な表情に戻り,
こう言った。
 「明日,夕方18時に薬師化成に行ってこい。ここからだと車で10分だ。
薬師化成の営業部長の板東さんには話をつけておく。百聞は一見にしかずだ。
話は以上。帰っていいぞ」。
 明日の夜,鈴木は恋人と久しぶりにデートをする約束をしていた。この人は人の予定も
聞かずに勝手に計画を決めている。それよりも,この先どうすればよいのだろう。
 「帰れって…田中さん,この先どうすればいいのですか? 出図期限は迫っているし,
サプライヤーさんにいろいろ聞きたいこともありますし。この先どこのサプライヤーさんと
話を進めればよいのでしょうか」?
 田中が鈴木の顔を見た。日に焼けた顔にギョロっとした目が光る。
 「この部品の発注先は在家工業だ。在家工業社は小さい企業だが,技術力は確かだ。
ちょうど600トン級の射出成型機をこの夏に設備増強する。在家工業は今までは
うちの仕事が中心だったけど,総合電機メーカー恵比寿電機のテレビ事業部
の新規商談が決まった。実は俺が紹介したんだけどな。この新設備の稼働率が上がれば,
他社よりもコスト競争力が出てくる。
 今日この後に鈴木君のところに在家工業の営業から連絡をさせる。明日の夜は,
21時以降だったら帰って来られるだろ」?
 この人は何で私の私生活をことごとく邪魔するのだろう。鈴木は心の中で思った。
 「俺も若いころはお前のところの部長にこき使われてな,いつもデートはキャンセル。
そのうちデートする相手すらいなくなった」。
 「なんで分かるんですか」?
 「顔に書いてある」。田中はぶすっと言う。
「それから,これも読んでおけ。お前のところの部長には前に渡してある」。
 田中は束になった紙の資料をドサッと鈴木の前に置いた。その資料の表紙には
「樹脂部品発注方針(社外秘)−設計説明用−」と書いてあった。

「樹脂部品発注方針(社外秘)」

 鈴木は設計棟に戻った。さっきまでいた購買部のフロアと違い,静かだ。
そうだ,まずは先輩に報告しておかないと。
 「先輩,田中さんのところに行ってきました」。
 「で,どうだった?絞られただろ」?
 「そうでもなかったですよ。この資料を読んでおけって。あ,あと,技術検討は
在家工業社と進めてくれということです。それから,あの人は設計出身なんですか?
 図面見せろって言われて見せたら,これじゃあ造れないって」。
「そうか,よかったな,大事にならなくて。俺も詳しくは知らないが,彼は設計出身
でないことは確かだよ。いつ聞いたんだったか,哲学科出身とか言っていたかな」。
 先輩との話が終わり,鈴木は田中から渡された資料の斜め読みを始めた。
 びっくりした。理論的かつ体系的に何をどういう割合でどこのサプライヤー
に発注するか,その結果どういうサプライヤーとの関係を作っていくのかが理路整然と
まとまっている。サプライヤー評価,コスト比較,サプライヤーの経営状況,人物情報,
各社の技術トレンド,設備投資計画,発注計画,ターゲットコスト,目標設定と達成状況,
競合他社の開発計画を基にした設備稼働計画や工場別の損益計画など,
本来なら得られるはずのない情報も網羅されている。
 これほど分かりやすく,かつ説得力のある資料を見るのは入社して以来初めてだった。
鈴木は心の中でつぶやいた。
 「購買っていうのは声が大きく交渉上手な人がコスト削減をしているだけかと
思ったけど,ちょっと印象が変わったな。こんな資料があるんだったら早く見せて
くれればよかったのに。
 でも変だな。今までも勝手にこっちでサプライヤーに声かけて技術打合せを
やってきたけど,購買部の誰も何も言ってこなかったし,どこのサプライヤーに
声をかけるかで『発注方針』を参考にしたこともない」。

 田中との出会いは,鈴木がエンジニアとバイヤーの境界を歩きだした第一歩だった。
(次回に続く)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162768/

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