2013.4.17号
「リバースオークションの誤解」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
─────────────────────────── 2013.04.17 ─

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 ☆今週のメッセージ「リバースオークションの誤解」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ

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■ 今週のメッセージ「リバースオークションの誤解」
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今回は2009年8月に執筆したメルマガを編集し再掲します。というのは、近年
特に公共セクターでリバースオークションの試行が行われているからです。
試行結果は概ね「大幅な経費削減効果が得られた。」とのことです。

以前から私がメルマガや筆書等でも触れていますが、今回は「リバースオーク
ションの活用」についての誤解と真実について書きます。

まずは、「リバースオークション」とは何かということですが、これはある
一定期間に電子的な手段を使って入札をさせるシステムやツールです。
オークションは他社や最低入札価格、自社の現状の入札価格を参照して入札
を続けるシステムです。いずれにしても価格と落札社を決定するためのツール
であり、そういう点からインターネットオークションと相違ないものです。
ただ購買・調達業務での電子入札とYahooのようなCtoCのオークションの
大きな違いが2点あります。

一つはCtoCオークションは売り手が複数の買い手を競わせるものであるのに
対して購買・調達のオークションは買い手が複数の売り手を競わせるもので
あり、多くのケースでは開始価格から競り下げていくものという点です。
つまり購買・調達業務のオークションの殆どは「競り下げ方式」であり、
そこから「リバース」という名前がついています。

もう一点は参加者の限定です。以前はマーケットプレイスのように購買・調達
業務におけるオークションや電子入札も公開型で多くの売り手に機会を与える
ケースが多かったです。しかし、業務上の守秘の問題や落札サプライヤが蓋を
開けてみたらとても対応しきれずに、入札そのものが無効になってしまう
ようなケースが頻出したため、現在では殆どのオークションは非公開型の参加
するサプライヤを事前に買い手が選定、指定する方式が殆どです。
(多くの場合は事前に公募し参加サプライヤを限定するようです)

このようなニ点の違いはあるにせよ、一般的なオークションと購買・調達業務
における「リバースオークション」はその役割・機能としては大きな違いはあ
りません。売買業務を行う上で「オークション」は既に普及しており、企業に
よってはこのようなツールを上手く活用することで交渉業務の効率化・標準化
を実現しています。このように既に「オークション」は一般的なシステムである、
ということを理解してください。

それでは「電子入札・オークションの誤解」とは何でしょうか?

最大の誤解は「オークションを活用すればコストが削減できる」というもの
です。考えてみてください。技術、生産、数量、商業的な条件が同じであれ
ば最終的に決まる価格は「落ち着く」ところなのです。それを通常の見積合
わせや入札ではなく、競り下げ方式にするだけで、より安く決まることは
あり得ないのです。
しかし、これを別の視点で考えると「オークション=コスト削減」という
錯覚に陥ることがよくわかります。

通常見積合わせによる交渉業務は買い手企業のバイヤーを介して1対n社という
形で行われます。かなり手間がかかるものです。
一方で「オークション」の場合はどうでしょうか?当然のことながら「仕様
調整」「見積条件の調整」等の前捌きの業務は残るものの「見積のやりとり」
「見直しのお願い」等の数回にわたる交渉業務は必要なくなります。
これはサプライヤn社間のn対nの競争になるからです。
そうすると従来は手間の問題から2社からしか見積を入手していなかった
ところにより多くのサプライヤを参加させることが理論上は可能になって
きます。つまり競争環境が激化するのです。電子であれ、そうでなかれ、競合
企業数を増やしこの競争環境を強めることが「コスト削減」につながっている
だけなのです。(そもそも参加企業数が増えているるかどうかも疑問が残ります)

もう一点「オークション=コスト削減」の錯覚につながるような理由を説明
します。先ほど「技術、生産、数量、商業的な条件が同じであれば最終的に
決まる価格は「落ち着く」ところなのです。」ということを書きました。
この「落ち着く」ところ、というのが重要なポイントです。多くのバイヤーは
大体自身でこの部品、原材料、商品がいくら位なのか、所謂「落とし所」を
知っています。これは過去の契約条件や複数社からの見積、コスト分析などで、
今回のこの案件がだいたいいくら位であればリーズナブルなのか、事前に把握
しているということです。ただ、この「落とし所」には罠があります。例えば
今まで購入したことがないような「新技術の部品」であった場合、業界内の
競争環境や事業環境、技術動向が大幅に動いており過去の実績自体があまり
意味を持たないような「動きがある商品やサービス」だった場合には
「落とし所」自体が間違っている場合があるのです。
バイヤーは忙しい人ばかりです。多くのバイヤーは数回の交渉を行って自分が
当初考えていた「落とし所」近くの価格に決まりそうになった場合にはそこで
契約条件を決めてしまいます。一方で「オークション」はその時点での市場
価格を入手することができます。サプライヤにとっては交渉相手はバイヤー
ではなく競合他社だからです。これがオークション実施後によくあるバイヤー
の感想の「思った以上に下がってびっくりした」ということにつながるのです。

ここまで書いてみると上記の2点とも「オークション」だからコスト削減できた、
ということでないことが良く理解できるでしょう。
「参加者を増やし競争環境をつくる」のも「適正な落とし所を評価する」のも
当たり前なバイヤーとしての当たり前な責務なのです。つまり「電子」だろうが、
そうでなかろうが、当たり前のことを当たり前にやっていれば「コスト削減効果」
はほぼ同等なのです。
本当に交渉術を持ったバイヤーが制限なく時間をかけられるのであれば「人」に
よる交渉効果の方が高いかもしれません。

私はある外資系企業のバイヤーとしてほぼ十年前に初めてこのリバースオーク
ションを経験しました。導入する前には「このようなツールは日本の商慣習に
合わない」と言って逃げていたのですが、米国からの圧力もあり、「とりあえず
やってみよう」的な感覚ではじめてみたのです。数回続けてみて「バイヤーの
仕事が変わる」と感じました。オークションの場合、多ければ一回の案件で百回
以上の入札があります。それでも所要時間は数時間です。今までは「優秀な
バイヤー=交渉力がある人」というのが通説だったのですが、どんなに交渉力が
ある人でも特定の案件で百回以上の交渉を行うことは不可能です。逆に言うと
「交渉すらする必要がない」のです。「オークション」は市場価格の早期取得の
ツールであり、交渉業務の自動化、標準化のためには大きな効果があるという
ことなのです。「リバースオークション」の真実は交渉業務の自動化、標準化で
あり、コスト削減はあくまでも「競争環境整備」や「コスト削減機会の捕捉」の
結果なのです。

当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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