2012.3.5号
「企業戦略と調達・購買戦略(その1)−米アップル社のサプライヤリストの公開の意味−/過去との決別」

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このメールは、アジル アソシエイツのお客様、
アジルアソシエイツが講演するセミナーにお越し頂いた方々、
その他の機会に名刺交換をさせて頂いた方々にお送りしています。

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
─────────────────────────── 2012.03.05 ─

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 ☆今週のメッセージVol.1「企業戦略と調達・購買戦略(その1)」
           −米アップル社のサプライヤリストの公開の意味−
 ☆今週のメッセージVol.2「過去との決別」
 ☆「調達・購買人材向トレーニングセミナー」のお知らせ
           −4月からのプログラムのご紹介−
 
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■ 今週のメッセージVol.1「企業戦略と調達・購買戦略(その1)」
□          −米アップル社のサプライヤリストの公開の意味−
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企業戦略と調達・購買戦略は同期して語られることはあまり多くありません。

しかし企業の中期経営計画などの経営計画では人件費の削減とコスト削減は
必ずと言っていいほど施策として取り上げられます。
一方で調達部門出身の社長が未だに決して多くないという事実や
近年の調達改革を進める企業のプロジェクトリーダーは少なからず
他部門から来られた方である、ということから調達部門の社内的な地位が
高くないことは否定できません。
経営者から見ると調達・購買部門は便利なコスト削減請負人程度の
位置づけなのかもしれません。

アジルアソシエイツが毎年実施している調達購買部門長調査によると、
経営者から特に最近高まっている調達購買部門への期待としてトップに
上げられているのは『コスト削減』です。一方で注目すべきなのは第二位に
『CSR、コンプライアンス、内部統制の確保』が上げられていることです。
従来であれば調達購買部門の果たすべき基本機能はQCD(品質、コスト、納期)
と言われていましたが、QとDは上位に入っていません。つまり、QとDは
あたり前、その上で、CSRの確保やサプライヤリスクマネジメント、
さらなるコスト削減などに対する期待が高まっているということです。

このように調達・購買の機能そのものや戦略は企業戦略や経営者の期待、
時代背景等によって、もっとダイナミックに変化する(させる)べき
ものなのです。一部の企業では調達・購買戦略がより重要な機能戦略として
位置づけられてきています。

その代表的な事例が米アップル社でしょう。アップル社は昨年の2月に
取引先監査報告書を公開し、自社の取引先37拠点でCSR違反のような
規範違反があることを発表しています。しかし今年の1月には一部メディアに
アップルのサプライチェーンである中国の部品サプライヤー1社における
過酷な労働環境が報じられた取り上げられました。
90年代に米N社が中国のサプライヤで違法な児童労働をさせていた、という
ことで批判が高まり大規模な不買運動につながりました。
このような社会環境を踏まえ、特に欧米企業では自社のみならず、自社の
サプライチェーン全体でのレピュテーションリスクの管理に気を配るように
なっています。アップル社はこのような経営的視点から巨額な費用を
投じてでもこのような監査を実施しているのです。

また今年の1月には主要取引先リストを公開しています。このリストに
載った載らないで日本企業の株価が上下したという位に社会的な影響をも
与えています。米アップル社が何故このようなリストを公開したのか、
その目的は定かではありません。しかし、背景には優良なサプライヤの
囲い込みの意図があると考えられます。特に近年従来の枠を超えた
コスト競争がグローバル規模で激化しています。こういう環境下では
「いかにコスト競争力のある優良なサプライヤと両想いになるか」という
ことが重要になります。これからは買い手が売り手を選ぶのではなく、
売り手が買い手を選ぶ時代になっていきます。米アップル社の
サプライヤリストの公開にはこのような意味があると考えられます。

米アップル社の強みは、ハード、ソフト、サービスのバンドリング供給であり、
卓越したブランド力である、ということは間違いありません。
しかし自社で生産を行わないファブレスカンパニーであるからこそ、
サプライチェーン全体での競争力強化や卓越した原価企画の能力に着目して
いるのかもしれません。
米アップル社の強みの一つが彼らのサプライチェーン構築力にあることは
間違いありません。

いずれにしでも経営の視点でサプライチェーンや調達購買をとらえている
よい事例と言えるでしょう。

次回は調達・購買戦略を日本企業(コマツ、富士通)を取り上げて説明します。

(野町 直弘)

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■ ☆今週のメッセージVol.2「過去との決別」

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めちゃくちゃ恥ずかしい思い出を公開したいと思っています。

1年ほど前のことです。パソコンのメールをチェックしていると、以前の職
場の関係者(かなりの年長者です)からのものがありました。

「覚えてるか?」

この文面からおわかりの通り、すごくイヤな感じというか、なれなれしいと
いうか、正直にいってあまりつきあいたくない人でした。私のメールアドレ
スは公開していますから調べようと思えば、調べることが可能です。私のこ
とが気になったのか、メールをくれたようでした。

「今度、そのへんにいくから会いましょう」とも書かれていました。

そこで、私はさらりとかわすようなメールを返信しておきました。しかし、
かなりしつこかったので、「まあ昔にお世話になったこともあった」と思い、
一度お会いすることにしました。

その人は、私と会うなり、いきなりこう切り出しました。
「なんか、調子にのっていろいろやってるらしいじゃん」
おいおい、と私は思いました。たまたま同じ職場で一緒に仕事をしただけの
関係にもかかわらず、尊大な発言は慎むべきだからです。
「テレビにも出てるって? へえ、お前はテレビに出るために会社を辞めた
のか」

この手の人間にはへりくだることが最も優れた解決策でしょうが、私は無言
のまま何も語りませんでした。

「いやだからさ、そんな顔するなよ。ちょっと言っただけだろ」
「ちょっと、って何をですか」
「だからちょっと、だよ」

さすがに私も興奮してしまっていたのか、私から会話を継ぐ気にはなれませ
んでした。何秒間か忘れましたが、永遠のような沈黙が続きました。

もちろん、ありふれた人なのかもしれません――。かつての同僚を茶化す人
であればきっとどこにでもいるのでしょう。以前の職場で見た私と、いまの
私にギャップを感じたかもしれません。あいつはたいしたことがなかった。
それなのにいま活躍しているということは単なる運か偶然か――。そう感じ
ていたとしてもおかしくありません。

どうも、彼は雑誌かテレビかラジオで、私が載っている(あるいは話してい
る)ものを見たようなのです。さらに、私の書籍がけっこう売れていること
に、驚いてしまったようでした。

そして、たまたま私が数百人規模の講演会で話したときの記事を読んだよう
でした。

「これがあいつか?」

たしかに、話している内容はかつて私が言っていたことと似ている。さらに、
メールマガジンを発行している。


でも、「聴衆を圧倒する、軽妙な話し口?」。彼は記事を読んで信じられな
かったのですね。

「お前、うまくやったな」と彼は言いました。「なんかコネがあったのか」。

そんなもんはあるはずはありません。コツコツと学び、コツコツとアウトプ
ットを重ね、成果を出し、それを次の仕事に結びつけるしかないからです。
魔法の杖なんてものは、探してもどこにもありません。

もう、私はイヤになりました。これは、コミュニケーションスキルでどうに
かなるとか、対話術とか、そんな種類の話ではないのです。その場に座って
いるのがイヤだったのです。ただ、できるだけ最低限の礼儀は尽くそうと考
えました。

「もう一時間は経ちましたし、こちらもそろそろ……」。私は時計を見まし
た。彼は不服そうな顔をするのです。きっと時間もありあまっていたのでし
ょう。
「なんだよ、忙しい先生だなあ」
さすがに私も言い返しました。
「先生と茶化されるほど落ちぶれていませんよ」
「先生、先生っていわれていい気になっているんじゃないか?」
「○○さん、あなたはふらっとやってきて、こちらを不快にして恥ずかしく
ないんですか」
沈黙が続きました。

「いや、まあ、なんというかなあ」彼は話しだしました。「そんなに活躍で
きるんなら、以前の職場でも、もっともっと活躍してくれりゃあ良かったん
だけどなあ」。
つぶやきのようでした。

私はこれまで、組織にとらわれない生き方を求め、他者にもそれを推奨して
きました。しかし、たしかに、自著でも書いたとおり、組織の力は強く、そ
れを個人の力では突破できないこともあります。残念ながら、組織を脱出し
たほうが力を発揮できることもあるでしょう。

私はかつての組織を批判しません。事実がどうであれ、その組織からお金を
もらい「食ってきた」ことはたしかだからです。組織で活躍できなかった、
と他人の目に映ったとすれば、それは間違いなく私の責任です。

「昔、お前は、こう言った。組織は変わらない、変わらないなら自分が出て
いく、と」
「もちろん変わる組織もありますよ」
「そして、多くの人も変われない」
「組織よりは人のほうが変わりやすいんじゃないですか」

そうかなあ、と彼は言いました。市場環境の悪化、製品が売れない、やって
も成果を正しく評価してもらえない、やるだけ無駄……。だから、個人が積
極的に変わるのは難しい時代だ、と。

組織が変わらないことを言い訳にしていては、たしかに何も変化できません。
私は、この人はたしかにずっと変わらないなあと思いました。

「そうやって言い訳ばかりして生きているんですね」。そう喉元まで出かか
りましたがぐっと抑えました。代わりに「変化したいひとはたくさんいます
よ。だから、自分がまっさきに変化して、それをほかの人たちに見せようと
しているんです、私は」

ふうん、と彼は言いました。

「なんなら、私がやっているメールマガジンでも購読してみてくださいよ。
一人の担当者でも変化できるんじゃないかと思って真剣に書いているんです。
もしかしたら組織は動かせなくても、一人ひとりの担当者が変わることはで
きるはずです」

「メールマガジンってねえ。そんなの購読したこともないし、読んでもどう
役に立つのかもわからないし」

「結局は、何もしない、ということですね。それじゃあ、たしかに変わりま
せんよ」

別に私は、アジルアソシエイツや、私がやっている未来調達研究所
( http://cobuybtob.sakura.ne.jp/ )を必要以上に宣伝したいわけでは
ありません。もちろん、私の発するコンテンツをお読みいただきたいと
強く願っています。ただ、他にもさまざまな著者の書籍があります。
セミナーもあります。いろいろな教材があります。また、知識・情報だけ
ではなく、個人が変わるためのきっかけはどこにでもあります。その小さな
きっかけを放棄しては、何も変えることはできません。

私は気になることはすべてやってみる、の精神で生きてきました。すべてが
成功するわけもありません。時間の無駄だったこともあります。ただ、やっ
てみなければ、失敗もできません。バットを振らなければ三振すらできない
のです。

みなさん、一歩を踏み出しませんか。

アジルアソシエイツでは多くの講義をやっていますし
( http://www.agile-associates.com/training.html#kiso )、
私の未来調達研究所( http://cobuybtob.sakura.ne.jp/ )でも、
もちろん、他の方々によるものでも、なんでもかまいません。

みなさん、行動によって一歩を踏み出しませんか。私の一歩も、近々ご紹介
できるはずです。あるひとは、「行動せずに意思決定の場から逃げてはなら
ない」といいました。

また、お会いしましょう。

(坂口 孝則)

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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
□      −4月からのプログラムのご紹介−
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2012年3月〜9月開催のプログラムをご案内いたします。
皆様のお申込をお待ちしております。

【基礎セミナー】
 製造業「調達・購買業務基礎」セミナー
  講師:野町直弘
  日程:2012年 3月 8日(木)
     2012年 4月 18日(水)
     2012年 7月 18日(水)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

【現場学セミナー】
 「中堅バイヤー育成」セミナー
  講師:野町直弘
  日程:2012年 5月 23日(水)
     2012年 9月 12日(水)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

 「調達・購買人材向け交渉力」セミナー
  講師:野町直弘
  日程:2012年 8月 24日(金)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

 「コスト削減の基本と見積査定入門」セミナー
  講師:坂口孝則
  日程:2012年 3月 14日(水)
     2012年 6月 19日(火)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

皆様のお申込をお待ちしております。

企業の個別研修をお引き受けします。
ご依頼、ご質問等々は、次のメールアドレスまで!
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