2011.9.6号
「ある購買課長の挑戦(中編)/競り下げ(リバースオークション)の使い方と数字の見せ方」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
─────────────────────────── 2011.09.06 ─

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 ☆今週のメッセージVol.1「ある購買課長の挑戦(中編)」
 ☆今週のメッセージVol.2
          「競り下げ(リバースオークション)の使い方と数字の見せ方」
 ☆「調達・購買人材向トレーニングセミナー」のお知らせ
 
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■ 今週のメッセージVol.1「ある購買課長の挑戦(中編)」

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スケジュールの関係で前回の続きを約半月ぶりですが、お届けいたします。
ちょっと長くなりましたので次号で完結させていただきます。
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「当社はこのプロジェクトXでリードタイムが15日から8日に短縮され
約50%削減できました。在庫は20%以上削減できました。結果的に保管庫の
スペースも10%削減でき、トータルでXX億円の定量的な効果を出すことが
できました。」
「当社は滞留在庫が500万円あったものがプロジェクトXの結果50万円に
削減しました。またリードタイムも当初の7日から4日に大幅に短縮することが
できました。」
「我が社はリードタイムが20日から14日に短縮しました。
また客先納期遵守率が100%となり、優秀サプライヤとして
大手取引先4社様から年間表彰を受けました。」
「弊社はプロジェクトの生産改善により不良率の大幅な改善を実現し、
約30%の在庫削減を行い前年比50%の増益を果たしました。」

前回ご紹介したプロジェクトXが画期的であるポイントは5つほど上げられます。
その中でも一番大きなポイントは『大きな効果』がでていることです。
ここに上げたのは発表会でプレゼンされたプロジェクトの成果の一例に
すぎません。リードタイム短縮、滞留在庫削減、不良率低減、納期遵守率の向上、
生産変動に対するフレキシビリティの向上、これらの効果が、
数%の世界ではなく、ディジット(数十%)単位で実現されていることに
驚きを隠せません。まずはこの成果の大きさがこのプロジェクトが
画期的である理由の一つと言えるのです。

それでは何故、このような大きな効果が出ているのでしょうか。
私がプロジェクトXの実務推進者である藤元課長に尋ねたところ、
このような答えが返ってきました。

「それは大きな成果が出るまで継続して改革を進めるからです。
このプロジェクトをスタートして5年になりますが、未だにゴールは
見えていません。様々な現場改革を進めてトライアンドエラーを繰返し、
昨日よりも今日、今日よりも明日、より生産性を高めようと我々も取引先の
現場担当の皆様も懸命に努力を続けているからです。簡単に言えば効果が
出るまで、いや出ていてもそれに甘んじることなく、継続的に徹底的に
愚直に改革し続けることがこのプロジェクトXの特徴なのです。
当り前なのですが、上手くいくまで、成果が出るまで、やり続けるから
絶対にいつかは大きな効果がでるのです。」

なるほど、その通りだなと思う。しかし、その一方でこのような
「購買が取り組む継続的で徹底的で愚直な現場改善」が続けられること自体が
このプロジェクトの画期的なポイントの2つ目ということがわかるのです。

サプライヤ育成、工程改善。言葉では言うものの購買部が主導して
そのような現場改善活動がどこまでできるものでしょうか。通常購買部は
現場や技術には弱い事務系人間です。結局はサプライヤに提案依頼を行い、
サプライヤに現場改善の提案をしてもらっているだけではないのか。
購買担当者は日々このようなジレンマを感じながら仕事をしています。
しかしプロジェクトXの2つ目の特徴は購買部が現場に入り込んで継続的な
現場改革を続けていることなのです。またそれによって大きな効果を
出している。このような取組みは他社には殆ど見られません。豊川自動車が
グループ会社向けの現場改善活動を支援していくことが非常に有名ですが、
これはあくまでも生産室という生産改善専門チームが行っていることですし、
目的や取組み方もプロジェクトXとはやや異なります。購買部がこのように
生産現場にまで入り込んで現場改革を主導している活動は非常に珍しいのです。
このように購買部が主体となった継続的かつ徹底的な現場改善活動は非常に
難しく、また他に類を見ない取組みと言えるのです。

プロジェクトXには他にも画期的なポイントが多くあります。
その一つとして次に上げられるのが、
「双方向の取組みとそれを上手く動かす三方よしの方法論」です。
先ほど記述しました豊川自動車の生産室の生産改善活動もやはり現場に
入り込んだ改革の取組みです。しかしこの取組みは買い手企業(親企業)が
売り手企業(グループ企業)を指導するという一方通行の取組みです。
この取組みの多くは長続きしません。何故なら、売り手と買い手の理論は
本来トレードオフだからです。買い手企業は改革成果をより多く還元する
ことを求めますし、売り手企業には段々とやらされ感が溜まってきます。
これを防ぐのが双方向の取組みです。売り手企業だけでなく、買い手企業も
同じ土俵で現場改善を進める。この双方向の活動は相互の企業努力によって
競争力強化を成し遂げようという合意を生み出します。
だから継続的かつ大きな成果を出していく取組みとなり得るのです。
つまり「双方向」の取組みは継続的な改善活動には欠かせないのです。
「三方よしの方法論」とは商取引においては、当事者の売り手と買い手だけ
でなく、その取引が社会全体の幸福につながるものでなければならないという
意味での、売り手よし、買い手よし、世間よしという理念であり、
元々は近江商人の経営理念に由来しています。プロジェクトXでの三方とは
「売り手」「買い手」それから「コンサルタント」です。
「売り手」「買い手」だけでなく、その両社に第三者的な立場で
支援、評価、教育を請け負う立場の外部「コンサルタント」を相対させる。
このコンサルタントの立ち位置が先の双方向の取組みを円滑化するものに
つながっていたのです。

このプロジェクトXが如何に他にはない画期的な取組みであったのか

今回は3つのポイントについて説明しました。
次号では残りの2点についてご説明したいと思います。
(次回へ続く)

(野町 直弘)

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注釈:この物語はあくまでもフィクションであり、過去もしくは現在において
似たような企業もしくは登場人物がいたとしてもそれは全くの偶然です。


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■ 今週のメッセージVol.2
□ 「競り下げ(リバースオークション)の使い方と数字の見せ方」

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8月18日の日経新聞朝刊に興味を持った記事が掲載されていました。
 「歳出削減に期待の「競り下げ」不発? 調達、前年より割高の例も」
昨年、今年と数回ご紹介したことがありましたが、今年度から日本政府では、
歳出削減の期待が高い競り下げを導入していましたが、
その効果が思うほど上がっていないというものです。
(ちなみに競り下げはリバースオークションともいいます。
本文ではここからは「リバースオークション」と記載します。)

しかしながら、上記記事には「思うほどの効果は上がらないはず」
と思わせられる、以下の文章が記載されていました。
要はリバースオークションに精通していない人(もっといえば素人)が
実施したような感覚を受けたのです。
 1.コピーA4用紙の調達額は7%上がった
 2.ポスター作製と梱包・発送業務では落札価格は開始価格の
   半分以下になったものの、前年比1%高かった。

特に感じた事は以下の3つです。
まず、「A:開始価格の設定が間違っている」というものです。
リバースオークションは価格の上昇局面でない限り、
前年価格をベースとして開催する事が一般的です。
その前年価格に対し複数企業が応札できることをリバースオークションの
参加条件とすることでこのような事を防ぐことはできるはずです。
確かに、国の入札の場合には色々と法律で決められていることも多いのも
事実であり、上記のようなやり方はできないのかも知れません。
が、もう少し上手いやり方はできたと思います。

次に「B:案件の選択・単位が間違っている」というものです。
コピー用紙は確かにリバースオークションをしやすい品目
(複数部署での仕様の統一化、サプライヤ切替のハードルの低さ、
ボリュームメリットの効きやすさ、など)と捉えられがちです。
が、逆にいえば通常の入札でも十分にコストは下がりきっているケースも多く、
オークションをしても下がらない(値上がりしてしまう)ケースも
多くなっています。もう少し多少ハードルは高くともやれる品目を
探すべきだったのではないでしょうか。
また、2のポスター作製と梱包・発送にしても、作製業者と梱包・発送業者は
一般的に異なります。これらを別の品目に分けて入札をすることで
コスト削減を図るという事を考るべきだと感じています。

最後に上記A、Bを含めて、「リバースオークションをやればコストは下がる」
という幻想を持っていたように感じました。
逆にいえば結局のところリバースオークションも一つのツールであり、
正しく使わないと最適な結果にはつながりません。
「リバースオークションを入れればコストは下がる」という発想は
一昔前の民間でよくあった「システムを入れれば業務効率化が進む」という
考えとまったく同じものであり、間違っていることが既に証明されているような
発想だと思うのですが・・・

リバースオークションは使い方によっては上手い効果がでるツールです。
引き続き政府のリバースオークションに従事する方々には、
「より最適な使い方」を民間から学びながら最適コストの追及を目指して
頂きたいと思います。

そして話は変わりますが、この記事に注目する中でインターネットを
調べていたところ、民主党内にもリバースオークションを強く推し進めたいと
考える方も多くいらっしゃるようで、以下のような書籍の出版や記事の
インタビューもされていました。

書籍:「総理、増税よりも競り下げを!脱・お役所価格で財政再建」
http://www.diamond.co.jp/book/9784478016664.html

日刊ゲンダイ:8月25日これは画期的だ「競り下げ方式」は使える!
http://gendai.net/articles/view/syakai/132280

書籍や記事は書く人の思いを見せるものです。特にゲンダイの記事と
冒頭の日経の記事の表現の違いからは、数字は狙いによって色々な表情を
見せる(見せ方がされる)ものだという事を再確認させられます。
(日経の記事は前年単価ベースの削減率、日刊ゲンダイの記事は
開始価格ベースの削減率)

これらのように自分の意思を伝える為には数字の伝え方は本当に重要です。
TPOに応じて数字の使い分けをすることは購買業務に従事する方は
再度意識してみてもいいのかもしれません。

(奥田 高太)

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■ ☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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2011年9月の「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」の
開催についてご連絡させていただきます。

【基礎セミナー】
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  2011年 9月13日(火)
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皆様のお申込をお待ちしております。

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