2011.3.7号
「日米企業の凄い調達リスクマネジメント/推奨サプライヤとは何か?」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
─────────────────────────── 2011.03.07 ─

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 ☆今週のメッセージVol.1「日米企業の凄い調達リスクマネジメント」
                −アップルとトヨタ−
 ☆今週のメッセージVol.2「推奨サプライヤとは何か?」
 ☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ

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■ 今週のメッセージVol.1「日米企業の凄い調達リスクマネジメント」
□                −アップルとトヨタ−
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先回は米アップル社の凄い調達について取り上げました。

その中で彼らのCSR調達の監査についてアップル社が公開した監査報告書の
内容(「2月14日にアップルが取引先監査報告書を公開し、37拠点で
 CSR違反のような規範違反があることが判明した。彼らは中国を中心とした
 全世界の127施設を対象に調査を行った。この調査は昨年6月、
 ティム・クック最高執行責任者(COO)らを中国に派遣し、
 独立した第三者の調査チームが取引先の従業員1000人以上を対象に
 メンタルヘルスや労働環境などの聞き取り調査を実施した」という内容)
について、このような徹底した現場監査を行っているという凄さに
びっくりさせられました。

このような活動は一般的に調達リスクマネジメントの一手法と言えます。

以前、米国のスポーツ用品メーカーの東アジアのサプライヤが児童労働を
させていたことで米国内での不買運動につながったことがありました。
この事件を発端にして、企業が、たとえ調達先(サプライヤ)の
問題であったとしてもCSR違反等により自社のブランド力の著しい低下に
つながるような「風評リスク」について、事前にリスクを回避、
軽減するような活動をしなければならない、という活動がでてきています。
これを調達リスクマネジメントと言うのです。

調達リスクの代表的なものは取引先の事故や天災、その他の経済的、
政治的な状況でモノを仕入れることができなくなる「供給リスク」です。
今回は日本を代表する企業であるトヨタ自動車の供給リスクマネジメントの話です。
(これはトヨタさんに部品を販売している部品メーカーの方から聞いた話なので
 その真偽を確かめた訳ではないことをまずはお断りしておきます。)

「ある部品メーカーさんの営業にトヨタ社の調達部門から問い合せがあった。
問い合せ内容は『ある大手素材メーカーのXX工場で火災が発生したが、
御社の供給に問題はないか』というものだったそうです。
この部品メーカーの営業の方は驚いたそうです。
何故なら、当該大手素材メーカーの製品(素材)はこの営業マンの部品の
主原料ではなく、どう考えてもXX工場の火災と自社の生産が
つながらなかったからです。しかし、実はよく調べてみるとXX工場での副産物が
この部品メーカーの主原料の原料であったのです。
トヨタ社はそれを把握していたのです。」という内容の話でした。

一般的にこのような管理を「源流管理」と言います。

「源流管理」とは元々「品質管理」の用語であり、主に製造品質の
バラツキを管理するために根本となる問題点を見つけ出し、
徹底的な改善をすすめるというものです。
近年このような「源流」に起因する品質問題や供給リスクが増えています。
特にハイテク製品については複数の部品メーカーが代替品を生産しているものの、
その特定のディバイスの特定の原料は一社の一工場に生産を依存しており、
その工場で火災が発生して多くの企業の生産がとまってしまう、
というような状況が上げられます。

このように源流管理は調達リスクマネジメントにおいても
非常に重要な管理手法です。しかし、調達リスクマネジメントについては
概念すらない、という企業が少なくありません。
そのような時代であるにも関わらず、トヨタ社の徹底した源流管理と
それを調達担当者が把握しているという凄い話です。

アップル社にしてもトヨタ社にしても共通したキーワードは
「徹底力」「現場力」です。
源流管理を徹底することはアップル社の徹底した監査同様、費用と時間が
かかることです。それを徹底している日本企業もあるという
凄い調達の話の続きでした。

次回は以前にも取り上げましたが、
「日本版調達リスクマネジメントの原点」として昭和12年に作られた
トヨタ自動車の「購買係心得帳」について取り上げます。

(野町 直弘)

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■ 今週のメッセージVol.2「推奨サプライヤとは何か?」

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先週、社内でサプライヤマネジメントに関して議論を行っていた時の事。
「サプライヤマネジメントとは何か?」
この問いに関しては、皆の意見がまとまります。
「サプライヤを公平に評価する事により、不公平に取り扱う事である。
 推奨サプライヤを選定する為の基軸になるものである」と。

じゃあ次の質問
「推奨サプライヤとは何か?」
という問いかけに対しては、3名のコンサルタントが議論を戦わせます。

「購買部が行った公正な評価の元、推奨して取引をすることに値すると
 定めたサプライヤ。」
「じゃあそこからしか購入しないの?設計が決めちゃったサプライヤは
 どうするの?」
「システムで買えないようにしばるのもあるよね。」
「でも業務が回らないし、そもそも設計を説得できないのでは??」
「じゃあ汎用品しか推奨サプライヤってできないんじゃないの?」
などなど、喧々諤々の議論です。
結局議論がまとまらずに発散だけして終わりかと思われたそのとき、
ある記事が目に入りました。

上海万博の推奨サプライヤ制度の記事です。
http://www.stv-japan.jp/shibozazhi/200805-32-33.pdf

詳細は記事に譲りますが、以下のように記されています。
「推奨サプライヤは世博局が公募し、厳しい審査を経て選定した企業であり、
参加者が安心して発注できる企業です。」
私自身は、この考え方が一番マッチするのではないかと考えます。

上記を購買の推奨サプライヤ制度用にいいかえると
「推奨サプライヤは、購買が厳しく多面的かつ公平な評価を行って
選定した企業であり、要求元の方が安心して発注できる企業です。」
となります。

逆説的な極論としては、以下のように言い換えられるかも知れません。
「推奨サプライヤ以外から発注した場合には、購買は責任を取りません。」

ここまで書くと
「購買なのに無責任じゃないか。」、
「きちんと責任は取らなければだめじゃないの?」
など、反論が出るかもしれません。
が、このような姿勢や想いを持ちながら、要求元・サプライヤとの
調整・交渉を行わない限り、推奨サプライヤというものが
根付かないのではないかという懸念を持っています。

品質がいいというだけで、設計から選定されてしまうサプライヤがある一方、
どんなにQCDの評価が高かったとしても発注量が増えないサプライヤも
あるのは事実です。
冒頭のサプライヤマネジメントの本質である、
「公平な評価による不公平な取り扱い」ではなく
「過去の取引と設計部門との距離に基づいた不公平な取り扱い」にしか
ならないのではないでしょうか。

今回、説明した推奨サプライヤ制度の考え方が皆様に受け入れらないかも
知れません。しかしながら、
「サプライヤマネジメント・推奨サプライヤ制度の考え方」における
新たな視点として、興味を持って頂ければと思っています。

(奥田 高太)

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■ ☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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皆様のお申込をお待ちしております。

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