2011.2.22号
「米アップル社の凄い調達/詳細に見積を取得する」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
─────────────────────────── 2011.02.22 ─

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 ☆今週のメッセージVol.1「米アップル社の凄い調達」
 ☆今週のメッセージVol.2「詳細に見積を取得する」

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■ 今週のメッセージVol.1「米アップル社の凄い調達」

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今年の初めに日経新聞に衝撃的な記事が掲載されていました。

それによると、「アップルが2010年に購入した半導体は120億ドルで
世界3位の見込み。2011年には韓国サムスン電子を抜いて、
米ヒューレット・パッカード(HP)に次ぐ2位となる見通しだ。」であり
「低消費電力プロセッサー「A4」のようにアップルは本体の仕様が
世界共通なため、部品メーカー1社からの調達量は桁違いに大きくなる。」
とのことです。
つまり極めて1品目、1SKUの調達数量が大きくなっているのです。
このような前提の元に、「発注量が1桁、2桁多いのに値切らない」どころか、
他社よりむしろ高く買うことで安定供給を保証してもらうのだそうです。

これが本当の話であれば凄いことだな、と思っていましたが、
2月16日付けの日経産業新聞を読んで改めて驚かされました。
「アップル、取引先監査報告、3施設から調達中止、規範違反は37拠点。」
という記事です。内容は「2月14日にアップルが取引先監査報告書を公開し、
37拠点でCSR違反のような規範違反があることが判明した。
彼らは中国を中心とした全世界の127施設を対象に調査を行った。
この調査は昨年6月、ティム・クック最高執行責任者(COO)らを
中国に派遣し、独立した第三者の調査チームが取引先の従業員1000人以上を
対象にメンタルヘルスや労働環境などの聞き取り調査を実施した」
という内容です。この調査の凄いところは、徹底力です。
COOが取引先に乗り込み、単なる書面でのアンケート調査に終わらず、
1000人以上の取引先の従業員の調査を第三者の調査チームを雇って(?)
行っていることです。。
いくらかけているのでしょうか?
年初の記事についても2月の記事についても共通するのは、
調達力の強さを武器にした戦略です。

例えば「発注量が1桁、2桁多いのに値切らない、むしろ高く買う」
というのは、自分が買っている部品がいくらであるべきなのか
分かるからできるのです。また安定供給の確保についても
それを支える情報インフラなどのプラットフォームが整備されているから
可能となります。
日本の会社がよく言う
「きめ細かな対応力(供給力)を持ったサプライヤとの取引」
だけではないのです。

また2月の記事に関してもそうです。これだけ大規模な調査ができるのは、
それだけサプライヤに対する影響力があるからです。
それでなければこれだけ大規模な監査に協力してもらえないでしょう。
これも同様に多くの日本企業の課題と言えます。

しかし、今回私が感心させられたのはそういう表面的なことではありません。
実はその裏にある経営戦略そのものなのです。アップルの強みは
言うまでもなく、その企業ブランド力と製品企画力戦略にあります
しかし、通常であれば、製品企画・開発力に強みがある企業は総じて、
製品開発チームに力があり、その後コスト削減やサプライチェーン最適化の
追求が追随していくという傾向があります。
しかし、アップルの場合はヒットする製品開発力と徹底した原価企画、
戦略部品の共通化、サプライチェーン最適化が共存しているのです。
これは結果的にそうなったのではなく、意図的に実現しているものです。
つまり企業の経営戦略そのものがこのような企業全体の最適化を
実現していると言えます。
今回の記事を読み私はそれを再認識しました。
取引先に対するCSR監査は企業の風評リスクをマネジメントするために
今後益々重要視されていきます。つまりアップルは彼らのブランド力を
強化する(劣化させない)ために大きなお金をかけてわざわざ1000人を
対象にした監査をやっているのです。

これはブランドマネジメント、製品戦略、調達を含む
サプライチェーンマネジメントの同期化であり、最適化です。
記事の裏側にどのような事実が存在するのか、わかりませんが、
もしこれが事実だとすれば、調達機能が事業モデルのイノベートを
リードしているとも言えるでしょう。
まさにイノベーション型調達モデルを実現している米アップル社の凄さです。

(野町 直弘)

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■ 今週のメッセージVol.2「詳細に見積を取得する」

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日々の購買における見積業務。見積を取得する中で、それぞれ材料費、
加工費などは細かく把握するバイヤーの方は多いでしょう。

しかしながら、一方運送費。この運送費については、
ブラックボックス化されているケースは少なくないように感じています。
運送費を別にきちんと把握しようと、見積明細を詳しく取得しようとしても
サプライヤ様から得られる回答は
「別出ししようとすると、逆に高って辻褄があわなくなりますよ」
と回答されてしまった経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私が支援したプロジェクトの中でも、同様の回答をサプライヤ様から
頂いた経験もあります。
そのプロジェクトでは、第1ステップは、材料・加工・外注の洗い出しが
メインでしたので、まずは引きましたが・・・

そのブラックボックス化しやすい運送費にメスを入れるような取組の記事が
2月19日(土)の日経に掲載されました。
本田技研工業は国内の部品物流を引き取り物流(自社での部品輸送)に
変更するとのことです。(記事詳細:http://s.nikkei.com/hYPk3K)
記事によると、
 1.物流費用を集約し、ボリュームメリットを生かしたコスト削減
 2.サプライヤ様の価格構造の見える化および物流費削減
の2点が狙いです。効果としては、1割〜2割の削減に繋げるとありました。
ただ、サプライヤ視点では「価格構造が透明化」されるため、
難色を締めす可能性も高い、従ってサプライヤが乗るか乗らないかが
争点になり得るとも書いてあります。

記事にもありますが、この取組によって、サプライヤの価格構造が
より詳細に把握可能になる事は間違いが有りません。
そして、この取組の後、サプライヤの選別が進むのではないかというのが
私の考え方です。
今までの取引背景も含め、誠実かつ競争力のあるサプライヤは
今後重視するようになるでしょうし、この取組に対し、
今まで運送費をまぎれさせていたようなサプライヤは、
価格説明などの際に信用を失ったりというケースがでてくると考えています。
(サプライヤには価格説明責任が有りますし、
その説明次第では矛盾が発生する事も想像されます。)

この取組からは、調達における運送費の大きさを再度認識させられると共に、
日々の見積業務の中でも、材料・加工費以外の項目もより詳細に
把握する必要があると改めて実感しました。
それぞれの明細をきちんと自分自身が納得できるように把握する、
そのために必要な情報をサプライヤに出させるということは基本である共に、
徹底できれていないかもしれません。

基本である詳細の見積把握を再度徹底するだけで、
ひょっとしたらコスト削減の余地がある企業はあるかもしれません。
もう一度見直してみてはいかがでしょうか。

(奥田 高太)

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