2008.11.28号
「購買係心得帳/壊れ窓を作らない」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
──────────────────────── 2008.11.28 ───

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  ☆今週のメッセージVol.1「購買係心得帳」
  ☆今週のメッセージVol.2「壊れ窓を作らない」
  
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■ ☆今週のメッセージVol.1「購買係心得帳」
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今年9月の日本能率協会主催の「調達・購買革新大会」で
トヨタ自動車の増井常務の特別講演でも触れられていましたが、
今でもトヨタ自動車の調達部門の拠り所になっていると言われる
豊田喜一郎氏の「購買係心得帳」について今回は書きたいと思います。

これは豊田生産コンサルティング株式会社の青木代表が、
「元トヨタマンの目」というブログに書かれている内容を抜粋しています。

豊田喜一郎氏はトヨタ自動車の創業者であり、2代目の社長です。
「購買係心得帳」は豊田喜一郎氏が昭和12年に
常務の時に書かれた14カ条の規範であり、
その当時は購買係はたった10名程度の人員だったようです。

今回はその中で前半の7カ条をご紹介します。

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購買係心得

<第1条>
受け持ち部品の材料の良否、値段、工作の良否、工賃等を研究し、
常に材料の原価及び適切な工賃より計算して、
無理のない範囲内で最も安く優秀な部品の買い入れに努力すること。

<第2条>
納期に無理が生じないように注文を出し、
予定の納期に必ず納入させるように努力すること。

<第3条>
検査不合格品があった時には、その理由と数量とを検査係より通知を受け、
その理由を部品メーカーが充分わかるように説明する。
また必要によっては部品メーカーを呼んで、
検査係からその不良となった理由を直接明示させ、
今後再びそのような不良品を納入しないように厳しく注意すること。

<第4条>
購買先の選定には特に注意を払うこと。
各方面にアンテナをめぐらし、
他に優秀なところがないかどうかを常に研究しておくこと。
1部品に対してはなるべく2ヶ所に注文することを原則とする。
ただし、止むを得ない場合には、
部長の許可を得た上で、1ヶ所または3ヶ所とする。
1ヶ所の場合は、出来るだけ早く、
他の適切な購買先の選定に努力すること。
3ヶ所以上の場合には、
なるべく従来の注文先に迷惑のかからないように特に注意しながら、
値段が高く、不良が多いところへの注文を
順次減少させていって差し支えない。

<第5条>
他に適切と考えられる部品メーカーがあった場合は、
部長と相談の上、試作をさせること。
そして特に製品が優秀であるとか、
特に安価である場合はその理由を確かめ、
十分な理由が確認できた場合は、
従来の2社と並行して注文を出し競争させること。
ただし、無理をさせて、部品製造工場が
立ち行かないようにしてしまうことが絶対にないように注意すること。

<第6条>
従来外部から購入している部品を当社製にした方が、
コストが2割以上安価で、
しかも性能も優秀な物が出来る見込みがある場合は、
部長に相談し、部長は工務部長と相談した上、
果たして本当に2割以上安く出来るか否かを確認して、
しかる後に両部長相談の上、当社製作に変更すること。
なお当社製品で外部に注文した方が有利と思われるものがある時は、
両部長に申告すること。

<第7条>
各購買係で注文する1台当りの金額は部長に届け出ること。
部長は常務に相談の上、予定金額を定め、
その予定金額の範囲内で買い入れできるように研究すること。
半期に1回以上、購買単価研究会を開催し、
単価の高い安いについて研究すること。
この研究会の人選と時期及び場所は、部長がこれを決定し召集すること。

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私も仕事がら購買方針や顧客企業用の購買規定を作る機会が多くありますが、
昭和12年に作られたとは思えない位先進的なものですね。

特に、第1条、第2条、第5条など、
「無理のない」「無理をさせない」という部分には
「無理がある低コストは長続きしない」という考え方がベースになっています。
第1条の「常に材料の原価及び適切な工賃より計算して」という文言も
素晴らしいと思います。
バイヤーなるもの、自分が購入している物の適切なコストを
常に把握すべきという考え方です。
第4条の「2社発注」の考え方は今でも購買・調達の基本です。

第6条の内外製についての考え方は、今でも多くの企業で
内外製の決定に購買が絡めていない状況を考えると先進的ではありますが、
言ってしまえば当たり前の話で、
メリットを検討して内外製を決定しようという話です。
企業が大きくなればなるほど、
実際には生産部門と購買部門の垣根が高くなってしまいますが、
それがおかしいのでしょう。

第7条は「原価企画」や「開発購買」に近い考え方ですが、
昭和12年当時のこの考え方が出ていることが驚きです。
「購買単価研究会」も人材育成に悩む多くの企業のヒントになるでしょう。

いやー、凄いものを見つけてしまいました。

(野町 直弘)

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■ ☆今週のメッセージVol.2「壊れ窓を作らない」
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先日読んだ本から、サプライヤ等社外との接点が多く、
また契約書やRFQ等の公式文書に接する機会の多いバイヤー、
購買部門の方々にも役立つものがあるのではないかと思うものが
ありましたのでご紹介させていただきます。

『「壊れ窓理論」の経営学 犯罪学が解き明かすビジネスの黄金律』
マイケル・レヴィン(著)

壊れ窓理論は犯罪学でよく言われている理論です。

たまたま通りがかった道沿いの家の窓が壊れている。
そしてこの窓が明らかに長い間壊れたまま放置されている。

「この家の住人は壊れた窓など眼中に無いのかな?」
「周りの地域住民も関心が無いのでは?」
「だとしたら他の窓を壊しても、壁に落書きしても、
誰も気にしないのではないか?」

そんな印象を受けたことは無いでしょうか?
この印象こそが壊れ窓理論のポイントです。

壊れ窓理論の有名な事例として、ニューヨークでの事例があります。
1990年代ニューヨークのジュリアーニ市長が
犯罪撲滅のためにとった政策は、
落書き、無賃乗車、窓拭きなどのによるチップの強要をなくすことでした。
すると、小さな犯罪だけでなく、凶悪犯罪も激減したそうです。

要するに壊れ窓理論とは、小さなほころびが、より大きなほころびを
容認する印象を生み出してしまう、ということです。

例えば、飲食店の店内が汚かったら。
不衛生な料理が出てくると思ってしまいます。
例えば、病院の待合室にある雑誌が埃をかぶっていたら。
治療器具も錆びているのではないか、と不安になってしまいます。

小さな失敗、小さな怠慢、小さなほころびが、より重大な悪い印象を
その企業に対して持つことになります。

より小さなことにこそ執着し、改善していかなければならないのです。

また、この理論は
「悪い印象を与えないと言うことだけではなく、良い印象を与える」
ということにも応用できます。

例えばGoogle。
検索のスピード、検索の精度など、検索エンジンの性能自体が
高いことは分かるのですが、それでも他の検索エンジンと大差は
無いように思います。

しかし、検索エンジンが多くあり、その間に差がないように感じる
競争状態であるからこそ、検索のスピードが少しでも速い、
検索の精度が少しでも高い、ということが大きな差を生んでいる。

つまり、Googleはそれまでの検索エンジンにあった壊れ窓を
いち早く取り除いた、ということができます。

どうでもいいような小さなことがとても重要だと言うことを
この理論では説明してくれます。

日本電産が机の整理を徹底させていたり、
リッツカールトンが目の届かない隅々の清掃まで徹底している
ことは、壊れ窓を未然に防ぐことに繋がっているのでしょう。

小さなことをとにかく徹底する。
必ずそれが成果へと繋がるということはよく言われていることですが、
こういった視点で見ると納得できる言葉だと感じます。

私自身も日頃から注意していかなければならないことだと反省させられます。

(西岡 聖太)

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