第45回 調達・購買の業務へ係わる人への教訓
<赤字覚悟の販売>
2008年4月1日、暫定税率の期限切れによって、多くのガソリンスタンド(以降、GS)でガソリンが値下がりしました。
このとき、ニュースで盛んに報道されたのが、1リットル当たり25円の暫定税率が課せられた3月仕入れ分の在庫を赤字を覚悟して値下げして販売するGSの姿でした。
ガソリンは、石油元売り会社が出荷した段階で課税される「蔵出し税」であるため、1リットルあたり25円の暫定税率が課せられた3月仕入れ分の在庫を値下げすれば、GSはその分のコストを負担しなければなりません。
GSは原価の構造上明らかに赤字なのに、なぜ、安い値段で販売するのでしょうか。
それは、GSが常に他店の価格を横睨みした熾烈な販売競争に晒されているからです。
<調達・購買の業務に係わる人への教訓>
調達・購買の業務に係わる人は、モノ(資材・物品・サービス)を購買しようとする際、一般的に大きく2つのアプローチから、適正価格で購買することを試みます。
1つが、複数社への見積、入札やリバースオークションの実施といった、サプライや間の競争原理を働かせ「市場」の適正価格を取得する方法。
2つ目が、購入する資材・物品・サービスの「原価」を割り出し、サプライヤと購買金額を交渉する方法。
調達・購買の業務に係わる人にとって、今回の暫定税率の期限切れ事件でのGSの事例は、当たり前でありながら、改めて一つの重要な教訓を示してくれたと思います。
それは、モノの値段が決まる要因は「原価」よりも「市場の競争環境」の方が決定的であるということです。
サプライヤ間の激しい競争環境下では、バイヤは時として原価よりも安くモノを購買することができます(サプライヤが赤字覚悟で販売する)。
一方、競争環境の無いところでは、バイヤは原価よりもはるかに高い価格だったとしても、その値段でモノを購買するしかないのです。
<教訓からモノを適正価格で購買する方法>
逆に、この教訓から調達・購買の業務に係わる人が、モノを適正価格で購買する最良の方法を考えるならば、「サプライヤ間の競争環境をつくる」ことを徹底することだと私は思います。
当たり前に思えるかもしれませんが、
モノを購買する際、常に複数社と交渉しているでしょうか?
複数者と交渉できるように、モノの標準化・汎用化を進めているでしょうか?
サプライヤを集約したとしても、定期的に入れ替えを行っているでしょうか?
入れ替えとなるサプライヤを発掘、育成しているでしょうか?
最近、当たり前にこれらのことを愚直に徹底している企業は、優れた企業だとしみじみ実感する次第です。
2008年5月
田中
バックナンバー 一覧
- 第45回 調達・購買の業務へ係わる人への教訓
- 第43回 工場監査のススメ
- 第42回 反省について
- 第41回 携帯電話
- 第40回 アジルアソシエイツの紹介
- 第39回 自転車で旅する
- 第38回 バイヤーキャリア診断
- 第37回 失敗から得たもの
- 第36回 人との出逢い…そして学ぶこと
- 第35回 自然を感じる
- 第34回 プロフェッショナルについて拘る
- 第34回 当たり前の共有
- 第32回 昔の稟議制度を思い出して考えたこと
- 第31回 マイブーム?歴史から学ぶ?
- 第30回 小さな幸せ
- 第29回 世界一のバイヤーになってみろ!!
- 第28回 この仕事に携わって変わった物
- 第27回 梅春物
- 第26回 インターネットと公平性と透明性
- 第25回 お金儲けのノウハウ
- 第24回 電子マネー
- 第23回 世代交代
- 第22回 個人輸入の薦め
- 第21回 経済効果?
- 第20回 インターンをお使いになってはいかが?
- 第19回 最後の出費
- 第18回 血液型
- 第17回 バイヤーのためのポータルサイトco-buy.net
- 第16回 競争原理
- 第15回 企業の倫理観
- 第14回 情報の入手について
- 第13回 会社って何?
- 第12回 医療技術について
- 第11回 バイヤーのキャリアついて
- 第10回 人材採用について
- 第9回 インターネットの本質
- 第8回 コンサルタントを使う時(その2)
- 第7回 コンサルタントを使う時
- 第6回 設計最適化と生産最適化
- 第5回 日本人のデジタル思考化?
- 第4回 資材、調達、Sourcingという仕事
- 第3回 E-ビジネスにおける情報システムの投資アプローチ
- 第2回 ES(従業員の仕事に対する満足度)について
- 第1回 会社設立にあたって