2006.11.09号(原材料市況の高騰とバイヤー/バイヤー業務の難しさとは)

このメールは、アジル アソシエイツのお客様、
アジル アソシエイツが講演するセミナーにお越し頂いた方々、
その他の機会に名刺交換をさせて頂いた方々にお送りしています。

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      アジル アソシエイツニュース   2006.11.10
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『アジルアソシエイツは調達購買マネジメント実現企業です』
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  ☆今週のメッセージVol1「原材料市況の高騰とバイヤー」
  ☆今週のメッセージVol2「バイヤー業務の難しさとは」

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■ ☆今週のメッセージVol1
□ 「原材料市況の高騰とバイヤー」
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前回の購買ネットワーク会で「バイヤーの悩み相談」というコーナーを
行いました。

その中で「素材市況高騰による値上げ要請が厳しく、
値上げ要請ばかりでコストダウンが難しい」という話がでてきました。

ある素材メーカーさんに言わせると、
「こういう市況状況は十年に1回のチャンス。上げられるときに上げておこう。」
という状況だそうです。

こういう状況下、バイヤー側の対応をどうしていくか?ということで
いくつも意見が出てきました。

教科書的には
 1.長期契約の締結による市況高騰リスクの回避
 2.デリバティブ等のファイナンス手法でリスクをヘッジする
 3.市況の専門家を設置し市況変動やリスク発生の兆候を早期に検出する
などですが、他にも色々現場の観点にたった対応策がでてきました。

その代表的なものとしては
(1)サプライヤの集約ではなく分散を図る
:これは基本的な二社購買等のリスク管理の手法ですが、
 特に市況が高騰している断面では、
 新規の取引に積極的なサプライヤを入れることで、
 市況高騰の価格反映を妨げる。
 また、これによりサプライヤ1社あたりの購買量(注文量)は減少します。
 サプライヤ側としては当然売上の大きい取引先との
 価格交渉にフォーカスするわけですから、
 購買量の減少により、サプライヤへの影響度を低減することにもつながります。

(2)とにかく、市況高騰による値上げ幅を最低限に抑制する(便乗値上げを防止)
:これもある企業のマネジャーの方がおっしゃっていたことですが、
 同じ石化製品でも、値上げ交渉をする担当によって、
 値上げ幅は変わってくるということです。
 つまり、サプライヤ側の要請を単に承諾するのではなく、
 その内容についてしっかり吟味を行い、担当が納得できる
 理論的な裏づけが可能な金額で妥結を図るということです。
 これにより、値上げ幅を抑制しているとのことでした。

いずれにしても、今般の市況価格の高騰下、値段を据え置く、
もしくは、値上げを阻止する決定的な施策はないでしょう。
いくつかの施策を組み合わせ値上げ幅の減少を行うには
効果的であるかもしれませんが。

購買ネットワーク会には素材メーカーの方もいらっしゃっていますが、
なかなか興味深い意見をおっしゃっていらっしゃいました。

「素材市況高騰は永遠に続くわけではないのだから、
今般の市況高騰時に値上げを抑制することよりも、
将来的な取引を見据えて、上げる時は上げる。下げる時は下げる、
という考え方をすることが重要なのではないか?
それでないと、今後サプライヤ側からの
原価低減の協力・理解を得ることが難しくなる。」

このご意見も尤もなものです。

我々はオイルショック時にはまだ社会に出ていませんでした。
また、ここ10年近く円高とデフレ経済の影響で
「値上げ」に対する対応力が殆どない世代です。

もし諸先輩でこの時期に購買をやられていた方が読まれていらっしゃれば、
是非その当時の対応策(賃金の物価スライド制?みたいなものでしょうか?)
をご教示いただければと思います。
(野町 直弘)

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■ ☆今週のメッセージVol2
□ 「バイヤー業務の難しさとは?意欲の持てないバイヤーの方へ? 」
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先日ある顧客との商談時に
「購買の仕事は難しい。コンフリクトが多すぎるので、
よほど適正のある人でないとモチベーションを維持していくことができない」
という話をお聞きしました。

商談の後、購買の仕事に特有の難しさとは何だろうかと考えて見ました。

購買の仕事の難しさとは、これといったセオリーがない中で
(教科書的な購買本は出版されていますが)
次のような矛盾する課題を企業実態や個別のケースに合わせて、
その都度折り合いをつけて解決していくところに
あるのではないかと思っています。

1.短期的な成果と長期的な成果
 超短期的な成果をとるのであれば、特価での交渉等により
 低価格を追求することも可能です。
 というか、比較的難しくはありません。
 しかし、一方で品質や供給問題を起こしたり、
 中長期的な取引による小規模サプライヤの育成は
 難しくなると考えられます。

2.統制とサービス
 購買は様々なルールや方針を現業部門に守らせる部門であり、
 仕事のやりようによっては役所的な部署になってしまいます。
 また、一方で現業部門に対するサービスを提供する部門でもあり、
 その質の高低が、現業部門との良好な関係作り
 バイヤーの成果にもつながります。

3.コンプライアンスと効率
 社内ルールや法律を確実に守ろうとすればするほど、
 手続きやチェック業務は増えますが効率は落ちます。
 それらを両立する最適解を追求してくことが理想ですが、
 個別の実態にあわせて最適解を見つけることは
 簡単ではないと考えられます。
 (ITを活用すると両方を追及できるという理想的意見もありますが、
 最新の購買システムを導入した企業の実態は、
 理想とはかけ離れているケースも多いように見受けられます。)

4.サプライヤとのwin-winの関係と利益の取り合い
 サプライヤとのwin-winの関係を構築することが重要といわれており、
 実現しているケースもありますが、実際のバイヤー業務は、
 サプライヤとの利益の取り合いとなっているケースも
 多いのではないかと考えています。

このようなことを考えると、
セオリーで解決できる範囲の多い法律、税務や会計の専門家よりも
購買の仕事は難しい(応用問題を解く)仕事と言えるかもしれません。

しかし、一方で最適解を追求することをあきらめ、
表面的な低価格のみを追求したり、事務手続きに追われ、
意欲やモチベーションも落ちてしまっているバイヤーも
多いのではないでしょうか?

専門性とは、獲得した知識の量ではなく、
どれだけ高度な応用問題を解けるかで決まるものです。
そういう意味で、上記の様な難しい状況下でバランスを取りながら
日々業務を遂行している優秀なバイヤーが
実務体験から身につけていける応用能力は貴重なものであると思います。
また、今後このような応用能力が高く評価される時代が
必ず来ると思っています。
(鬼沢 正一)

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