第37回 失敗から得たもの

今年も早いもので半分が過ぎてしまいましたが、この半年間で「大きな失敗」と思える出来事がありました。

悩んだ末の自分自身の「判断ミス」が結果的に失敗となってしまい、当初は大変後悔しましたが、今では、「長い人生のうちの3ヶ月間、まわり道をしただけ。そのまわり道によって多くのものを得た」と思えるようになりました。ここでは失敗の内容については多くを語りませんが、同じ3ヶ月間を「無駄な時間」として捉えるか、「寄り道の時間」として捉えるかによって、自分自身の態度や充実度、その他の結果が全く違ってくると思います。
ここ数年最大のこの失敗から得たものは、たくさんの素晴らしい人との出会いです。

たまにはまわり道もいいものだ、などと今は思っています。

失敗にも「良い失敗」と「悪い失敗」があると思います。「失敗は成功のもと」という言葉があります。失敗をしても、そのことを反省して原因をつきとめ、それを活かせば、必ず成功するという教訓です。失敗をそのまま放置せず、失敗の経験から学ぶ事から、今ある多くの物事は、現在の形になったのでしょう。

「良い失敗」は、人を成長させたり、新たなものを生み出したりするためには、不可欠なものであるとも言えます。逆に連日報道される「警察の捜査ミス」、「企業が製品の欠陥を放置」、「医療ミス」等は、「悪い失敗」の例です。悪い失敗に共通されることは、失敗を認めなかったり、隠したりすることで、その後の対応が遅れて失敗を重ね、さらに大きな失敗に発展してしまったり、別の事例に活かされなかったりすることのように思います。残念ながら起きてしまった失敗を、良い失敗にするためには、まず失敗を素直に認めることが大切ではないでしょうか?

私は以前、創業間もないベンチャー企業に就職し、5年程の間に、会社の創業から急成長、そして急激な衰退までの一部始終を見てきました。
自社で設計した製品をOEMで製造していたことから、直接材の購買の担当をしていました。小さな会社のため、一人ひとりの担当領域は広く、購買等のシステムも構築されておらず、また製品が大ヒットしたこともあり、部品の調達に日々苦労したことを思い出します。

一方で、採用する部品の選定等に設計段階から参加でき、それが製品に反映され、さらには会社の利益・成長に貢献できることに大きなやりがいを感じて、毎日仕事をしていました。日々、社内の誰もが未知のものと向き合い、失敗と失敗からの成功を繰り返して、個人も会社も目に見えて成長していることを実感していました。

しかし、大幅な売り上げ増加が数年間続き、IPOの準備が本格化したころから、状況が変化したことを感じ始めました。結局その会社は業務を続けることが出来なくなってしまいましたが、節目々々での経営判断や各業務上の判断が違ったものであれば、会社と従業員の将来は別のものだったかもしれません。

しかし、会社自体は結果的に失敗してしまいましたが、各従業員が得たものは、技術力や業務経験、人脈等計り知れないものだと私は思っています。

このベンチャー企業での経験が、わたしが体験した最大の失敗の集大成ではないかと思います。
その後、直接の購買業務には関与してこなかったので、今のところその失敗体験は失敗のままかもしれません。
この会社に入って再度購買と向き合うにあたり、以前の失敗を活かしていければ、と思っています。

「チャレンジして、万一失敗しても、それを素直に認めて失敗を活かす」そんな気持ちを忘れずに居たいと思います。

2006年7月
臼井