第9回 インターネットの本質
私が大学卒業後就職したのは、1984年であり、社会人になって今までで2度のバブルを経験しています。
1回目が85年?90年の不動産、株式のバブル
2回目が99年?2000年のネットバブル
但し、私自身はバブルと言っても実感がわきません。仕事も私自身の家計も2回のバブル共に縁遠いものだったからです。
1回目のバブル時は、自動車会社の購買部に属しており、とにかくサプライヤに仕事を請けてもらうのが非常にたいへんだったことが印象に残っています。あとはタクシー拾うのがたいへんだった・・
2回目のバブルも「そーか、IPOっていうのはもうかるんだね」とはたから見ていただけでした。アジル起業前のフロントラインには2001年4月に入社したため、「昔はこんなに忙しかった」という話をうそのように聞いていただけでした。
かたや、フロントラインでは『ネットバブル崩壊』の影響をもろにうけた形となり、事業清算に至りましたが、私が専門とするB2Bの分野でも今でも頑張っている企業は頑張っているし、もう既に事業を畳んでしまう見切りの早い企業も多い。そもそもバブルの恩恵を受けたことが殆どないこのような私自身がネットバブルについて語るのもおかしな話であるかもしれませんが、結局『インターネットの本質』とは何かを忘れ、インターネットに対する過度な期待を抱きすぎたことが、ネットバブルの一つの要因になっている気がしてなりません。
それでは「インターネットの本質」とは何でしょうか? インターネットの特色としては双方向性やスピード、リーチ性が上げられます。これは私の考え方なのですが、とどのつまりは『情報流通コストを爆発的に安価にする』ためのツールで(にしか過ぎない)あると言えます。
これをビジネスの視点で置き換えると少ない初期投資額でビジネスの立ち上げやシステムの構築が可能ということになると思います。具体的な例を上げてみましょう。例えば私が花屋を開くとします。今迄は花屋をやるために、店舗を借りたり、什器を揃えたり、やはり開店当初は多少の折込チラシも必要ですし、色々な花を仕入れておく必要もあるでしょう。なんやかんや言っても初期投資で規模にもよりますが、少なくとも100万円以上の資金は必要になるでしょう。ビジネスを始めるためには資金が必要。これが今迄の考え方です。
一方でじゃあサイト上で花屋を開店しようとしたとします。基本的には売れるものを売る、ということを考えなければなりませんが、自分でサイトを作って公開するためには必要なソフトの購入も含めせいぜい5万円程度ですみます。楽天でしたら5万円/月。例えばYahooオークションに出品することで商売をしようと思えば月200円ですみます。サイトにアクセスしてもらうためのプロモーションや注文が来た時の対応に多少のお金はかかるものの、お金をかけなければ、かけないなりの事業を始めることが可能です。
つまりアイディアやビジネスモデルがしっかりしていれば参入のためのコストが非常に低く抑えられる世界が誕生したと言ってもよいでしょう。インターネットはそういう意味で新しいビジネスを生む土壌を作ったと言えるでしょう。
小さなビジネスが大資本に対抗して生き延びていくことはたいへんなことです。美味しそうなビジネスが立上れば当然のことながら大資本を持つエスタブリッシュはその領域に進出してきます。それまでに如何にその事業を確立しておくか、それから次の一手を考えて実行していくか、小さなビジネスが生き延びるためにはスピードといいますかアジリティが重要なポイントになります。
言い換えますと、インターネットにより初期の参入コストが抑えられたということは、大資本が参入するまでの事業確立の為のリードタイムが稼げるようになったと言えるでしょう。ビジネスの成長とともに稼いだキャッシュやノウハウを新たなしくみやしかけに投入し、好循環させていく、そのような理想的な絵が描ける世界は未だに残っているのではないか、と私は考えています。
それでは何故このような『ネットバブルの崩壊』になってしまったのか?インターネットのこのような本質を忘れてしまい、とにかく最初から大きな箱をつくる、という志向になってしまったことが一つの大きな原因ではないか、と考えています。私が専門とするB2Bの世界でも一時期騒がれたマーケットプレイスというコンセプトがあります。(まだ私自身は実現可能だと思っていますが)実際に当初の事業コンセプトをベースに今も堅実に事業をされている方に最近伺った話ですが、とにかく償却負担が大きくて、売上げは伸びているが収益が思うように出ない、ということを聞きました。
箱作りの発想からスタートしてしまったことが、今でも大きな負担になっているようです。一時期、利益が1回も出ていなくてもIPOは可能、という世界もありました。やはりIPOするためには綺麗で大きな箱が必要だったのでしょう。私も99年や2000年に会社を立ち上げていたらIPOを目指し、綺麗な箱つくりをしていたかもしれません。こういう状況を否定することもできないと考えています。
ただ、一つだけ最後に言いたいのは、今がチャンスである、ということです。インターネットの本質を活用したビジネスのチャンスは起業家に多く残されていると思います。
2003年2月
代表取締役社長
野町 直弘
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