第3回 E-ビジネスにおける情報システムの投資アプローチ

情報システムには大きく分けて二つの種類が存在すると考えます。
1.ビジネスモデルを実現する上で不可欠なシステム(如何に収益を生み出すか)
2.業務の効率化を実現するシステム(如何にコストを削減していくか)

今回は前者の情報システムに対する投資についてどうアプローチしたら良いか考えてみたいと思います。

先日、大手のネット銀行が軒並み会員の獲得および預貯金高に伸び悩み、重いシステム運用コストで赤字であるニュースを伝えていました。銀行は3年以内に黒字化を達成しないと、事業自体が廃業になってしまうそうで、まさに今ネット銀行はこれからが正念場といったところのようです。

まだ、ネット銀行のビジネスが行き詰ってしまったわけではないのですが、新しいビジネスモデルによって大きな利益を得るために、大掛かりなシステム投資をしたものの、逆に重いシステムコストによって事業が行き詰ってしまう例は、私も何度か身近なところで目にしています。

システムコストによって自分の首を絞めてしまうような事態だけは避けたいものですが、そのためには、どのような点に考慮する必要があるのでしょうか。

私は以下の二つの点について、十分な配慮が必要であると考えます。

1.ビジネスモデル(収益モデル、ユーザニーズ)の確証
2.情報システムへの段階的な投資


失敗した事例をみると、その多くがビジネスモデルの検証が甘いまま、一度に莫大な費用のシステム投資をしているケースが多いのです。

事前にビジネスモデルの確証が得がたい場合は多いのですが、その場合プロトタイプのシステムによって限定的なサービスを実施し、ユーザの利用動向に応じて機能およびスケーラビリティの拡張を図っていくのが最もリスクの低い方法でしょう。

この方法は投資効果を短期間で検証できるし、(もちろん、投資効果が期待以下であった場合は、計画したビジネスモデルから撤退することになります)EAIやEIPといった技術(ベースとなるアーキテクチャはJ2EEやXML)のおかげで、以前に比べれば比較的楽に統合化することが可能になっているため、メリットが高いといえます。

ただし、システムが継ぎ接ぎで、いづれ冗長になりすぎる構成となり、運用が大変になってしまう可能性もります。そのため、ある段階で抜本的な統合システムを組み直す必要はあるでしょう。

信頼性や取り扱うデータの機密性により初期投資に必要なシステムコストは大幅に変わってきますし、ビジネスモデルによって、細かい段階の切り分けができるものと出来ないものが存在するため、システム投資プランは個別に異なってきます。

しかし、システム投資の大まかなプロセスとして

1.ビジネスモデルの確証
2.システムの拡張プランの検証(その拡張プランに技術的な問題がないこと)
3.ビジネスモデルが行き詰るリスクを最小化するために、段階的なシステム投資

以上の3点を遵守することが大切です。


2002年6月
田中 亮